糖質ゼロという罠 | ポテトサラダ通信(校條剛) | honya.jp

ポテトサラダ通信 65

糖質ゼロという罠

校條剛

 糖尿病歴13年(2023年現在)の私は、この13年間、糖尿という道連れの機嫌を取りながら一喜一憂して不自由な毎日を送ってきました。糖質制限、筋トレ、ウォーキングを励行して、ヘモグロビンA1cの数値だけを生活の指標としてきたのです。

 しかし、今年2023年の頸動脈エコー検査で右側の頸動脈に3.9ミリ、左側に2.5ミリのプラークが付着していることが判明しました。一年まえにした検査が正しかったとすれば、右側のプラークはこの一年で1.4ミリも肥厚したことになります。

 血管のプラークは糖尿病患者であれば、ゼロということはあり得ず、健康人よりも肥厚していると考えるのが当たり前なのに、糖尿治療を始めた病院でも検査をした記憶がありません。糖尿病医療の問題点だと言えるでしょう。
 プラークは一旦出来てしまえば、手術やステント措置以外の縮小方法はないというのが医学界のガイドラインだそうです。

 しかし、一人この常識に異を唱える医師が存在しました。久留米で開業している真島康雄という方がその医師で、幻冬舎から『脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は脂が原因』という本を出しています。この書籍が「トンデモ」本でないことは、この医師が自らの患者数百人を治療した証拠の写真と数値が掲載され、はっきりとプラークの縮小を示しているからです。

 医学の常識はたった一人の疑問から始まることはこれまでもよくあることです。運動中に水を飲むことを禁じるという常識が破られたのはつい最近のことであることを思い出してください。医学界の常識というのはその程度のものなのだと思います。

 この本には、重要な指摘がいくつかありますが、その一つは「スタチン剤」の服用を止めるという主張です。私はLDLコレステロールの値を70以下にするという担当医師の指針の通りに、ピタバスタチンというスタチン剤を二年間服んでいました。結果が、プラークの肥厚だったのですから、スタチン剤を止めないという方向はあり得ません。私の現在の担当医師によると、アメリカではプラークが増えないようにするには、スタチン剤を二倍、三倍使うといいというのが現行の有力な指針だそうですが、私は久留米のお医者さんの説を採用しました。なぜなら、先ほど述べたようにスタチン剤を服用してから、プラークが増大したからです。

 久留米の真島医師の勧める食事療法は、徹底的に「油・脂」を排除することです。糖尿病にいいとされていた食品・食材もこと「油脂」の制限という基準で判定すると、ダメな食材ばかりです。糖尿にいいとされていて、脂質制限でバッテンの食材は以下です。

・オリーブ油→あらゆる植物油がダメ。ほとんど毎朝、こめ油、キャノーラ油、オリーブ油で野菜炒めを作って食べていました。
・玄米→胚芽の部分に油が含まれているのでダメ。自宅で食事をとるときには、圧力鍋で炊いた玄米食でした。
・青魚→鯖、サンマ、イワシ、アジなど脂の乗りのいいものがほとんどで、美味しいがダメなのです。スーパーで売っている魚はほとんど脂の乗った魚です。ヒラメ、タコ、貝類、カニ類など高級な魚介類ほど脂が少ない。真島医師の本では高級食材ばかり薦めていますが、実際的には金銭的に大変であることに加えて、町のスーパーでは食材が揃いません。ただ、安価な魚もあります。タラです。
・納豆→豆腐加工製品は、油脂分が多いので、ダメ。納豆は食べない日がないくらい常食していました。

 さらに、これまで糖分が少ない、あるいはゼロであるというので、常食していた食品を以下に上げます。
・プロセスチーズ一個→6個入りの丸い箱をよく買っていたが、脂質は一つで4.9グラムもある。これを毎朝ライムギパンに乗せて食べていました。
・サラダチキン一枚;成分をよく見ると、7.1~7.6グラム。加工食は混ぜ物が多いので、その点でも落第です。
・チーズ入りハンバーグ一つ;8.3グラム。
・シャトレーゼの低糖アイスクリーム(糖質70%カット)一つ;4.7グラム
・お魚ソーセージ;7.2グラム

 上記の食材でグラム数が分かっているものを一日に食べたとすると、合計が27.8グラムになります(アイスはたまにしか食べませんが)。糖質がほとんどゼロに近くても、脂質は結構多い食品が多いことが分かるでしょう。糖質ゼロだけを目安にしていると、別の落とし穴にハマってしまいます。
 油脂の必要摂取量は、男65歳から74歳までは、53グラム以下が理想だそうです。ただ、脂質ダイエット中でも10~20グラムは摂取するのがベターだと。

 私のこれまでの摂取量は、一日おそらく50グラム前後だと思われますが、心臓冠動脈と頸動脈にプラークの堆積が見られたことで分かるように、糖尿病である私はプラークができやすい体質になっているため、脂質は要注意なのです。私の担当医師もその点を注意してほしいのですが、医者にとって、患者は所詮他人です。患者は医師の指示だけで安心せず、自己防衛を常に怠ってはいけないのです。

 現在は、糖質を制限して、HbA1cの数値を下げることより、脂質制限を優先して食材を選ぶようにしています。どういう食事かというと、木島医師の薦めている「寒天、豆乳ヨーグルト、ビール酵母」は毎日欠かさないようにしています。揚げ物は基本食べません。
 野菜は生で食べるときも、油の入ったドレッシングを使うことをしません。糖尿では制限されていた果物と和菓子も解禁です。

 ただ脂質制限を厳格に守っているわけでありません。というのも、私の糖尿の特徴は体重が減ることなのに、脂質制限でさらに体重がどんどん減ってきてしまったからです。揚げ物こそ食べませんが、結構自由に食事を摂っています。まだ、太ってはきていませんので、腕立て伏せ一日50回など、多少の筋トレも始めました。