ポテトサラダ通信 27
京都文学賞
校條 剛
京都文学賞をご存じでしょうか?
京都文学賞は、今年の6月から募集を開始した新設の文学賞です。京都市が主催、京都新聞と大垣書店、ふたば書房など京都の書店組合が協賛しています。行政と新聞、書店が主体となって作り上げた強力な運営母体を持っているわけです。
応募作品のテーマに一つ縛りがあります。「京都を題材とする未発表の『小説』」ということです。京都を舞台と聞くと、有名な寺社や名所、祇園、舞妓などを思い浮かべるかもしれませんが、決してそんなことはありません。さらに「応仁の乱」や「本能寺の変」など歴史的な事件を背景にしなくてはいけないのでは、などとも思われるかもしれませんが、それもありでしょうが、現代の京都の風物や人物を取り上げていただいてまったく構いません。たとえば、京都府の舞鶴市が舞台であってもまったくOKなのです。またあるいは、東京に住んでいる人物が主人公なのですが、回想部分で京都が登場するとか。京都文学賞の主催は京都市ですが、地理的な縛りでいえば、京都府全体が範囲になります。
そこまで断定できるのは、私がこの賞のアドヴァイザー兼選考委員になっているからです。
私は、2014年から四年間京都に単身で住んでいました。大学の専任教員になっていたためですが、その最後の年の夏に京都市など、この賞の母体になる方々から相談を受けました。私が新潮社に在籍していたときに、賞を三つ創設していたことを聞き及んで相談に来られたのでした。かつて私が主導して創設した「日本推理サスペンス大賞」については、以前この欄で創設の経緯を記したとおりです。私はほとんど独力で創設のため奔走し、運営も中心になって獅子奮迅の活躍をしました。そのような経験を持つ人材が、京都には私しか居なかったのです。
半年あまりの会議を重ねて、この6月にやっと創設、募集の運びに至りました。ただ、募集原稿の締め切りが、9月末となっていますので、執筆の期間が非常に短いのは、初年度だからと言い訳いたします。来年も再来年もこの文学賞は続きますので、来年に照準を当てていただいてもいいかと思います。
しかし、記念すべき第一回、なんとか間に合わせたいという方々も多いことでしょう。我々は手ぐすね引いて原稿をお待ちしていますので、火事場の馬鹿力であろうと、神頼みであろうとなんとか間に合わせて応募していただきたいのが本音です。
現時点で一から書き始めるのはなかなか大変ですが、たとえば原稿をほとんど仕上げていて、どこかに応募しようと考えている方がいらっしゃるとすれば、京都の地名に入れ替えて、さらに京都らしい施しを装うとか、そういう手直しを施して応募するという考え方もできると思います。京都の自然や風物、人情が実感を伴って描かれているに越したことはありませんが、要は小説がうまく、面白く、深く書かれているかどうかだとお考えください。
もう一つ、この文学賞で募集がかけられているのは、二次選考、最終選考に携わっていただく「読者選考委員」という存在です。京都文学賞は東京の出版社や地方自治体の新人賞が既に数あるなかに船出をしようという後発の新人賞ですので、何か特別の特徴が必要だと考えました。その結果、現在のネットからの新人輩出にヒントを得たのが、読者の評価による選考という新しい方法です。かつて「読者賞」という形の新人賞が存在したことは事実ですが、京都文学賞では、二次選考はすべて読者選考委員に任せ、最終選考では読者の作家などの選考委員に混じって、受賞作を選んでいただくという重要な役目を託すシステムを初めて採用したのです。
この「読者選考委員」の応募締め切りは原稿募集より早く、今月、2019年7月末日までです。応募されるときには、「読書歴」や梶井基次郎「檸檬」の感想文(200字から400字と短いです)など多少の自己紹介文が必要です。この詳細については、京都文学賞の応募サイトをご覧ください。京都にお住まいの方々は、京都の大垣書店、ふたば書房などにチラシが用意されているはずですので、そちらをご覧いただいてもいいかと思います。京都にお住まいではなくてもまったくOKです。東京はもとより、北海道、沖縄の方々、九州、四国、東北や北陸や中部や、とにかく日本全国の「京都好き」「小説好き」の皆さんの参加をお待ちしています。
■京都文学賞(作品募集要項等)
https://www.koubo.co.jp/kyoto/
■読者選考委員募集
https://www.koubo.co.jp/system/contest/kyoto_dokusha/
【お問い合わせ】
京都文学賞実行委員会事務局(京都新聞COM営業局内)
電 話:075-241-5840(平日午前10時~午後5時)
メール:keikaku@mb.kyoto-np.co.jp