閉門即是深山 529
爺様ごっこ
やめたっと!いや、78歳になれば充分に爺さんだけど爺さんを演じている自分が鬱陶しくなってきた!
今までだいぶ爺様ごっこをしてきた。爺様の世界は、面白くない!まったく面白くないのだ!自分の脳ミソが、これは仕事じゃい?と思うぐらいの仕事をして、本当に満足が出来るくらいに趣味や、やりたいことに没頭するのが面白いんだよな!自分が楽しくなければ、付き合ってくれている周りの人も面白くないもの!と言って、もともと真面目な人間ではない私は、お茶の子さいさいに自分を切り替えることが出来る。コロナの前に若ぶっていた私は、あることが切っ掛けに爺様ごっこに転じた。
ほとんど入り浸る赤坂の喫茶店のマスターと話をしていたら彼がこんなことを言い出した。お客は誰もいなかった時だった。
「失礼なことは承知で言いますがね、2、3年前は貴方の顔色は、枯れたようでしたよ、でも、今は色艶も良いし、増して溌剌としていらっしゃる!」
どうも客の中で私が一番年上らしい!その爺さん集団の中で、現在の私が若々しく見えるという。そして、何か原因でもあったのか、と尋ねられた。
私は「ちょっと前から気付いて爺様ごっこをやめたんだ!」と言っても彼には伝わりにくいだろうと思い「これが最後の仕事になるかも知れないけど、結構ボクにとって大切な、やっておかなきゃならない仕事を思いついたんだ、思いついたというより、具体性に乏しくモヤっと考えていたことに本気になれたんだね!それにボクにはドラムという趣味がある。今では、ドラムの一部になって死んだら本望と思っているくらいさ!10年近くドラムの先生と1対1で技術を学んできたけどさ、この10月いっぱいで卒業すると宣言したんだ!今までに習った技術を本番で使えるようにしたいんだよ!デッサンの勉強を終えて、やっとキャンバスの前に立って描き始めようと思い出したんだ!素人だから下手でもいいじゃん、これからは教わったことを速く叩ける練習をするんだ!きっと人前で披露するには、自己連3年は必要だと思ってるんだ!81歳の素人爺ドラマーの誕生だよ!それだけでカッコいいだろ?何年か前に見失った方向が、違う形で脳ミソに現れたんだよ」マスターは「うん、うん、そうだね!」と聞いてくれている。
「81歳過ぎたら爺様ごっこ、本当の爺さんかも知れないけどね、今じゃない!これから頑張ってやらなきゃならない事がいっぱい出来ちゃったもの、爺様ごっこなんてやってる場合じゃないものね!」「そうか、それで色艶が良いんだ!足腰もしっかりしてるしさ!お客に言うことじゃないけど、バケモノに見えるよ」
「そう思っていてくれていいよ!今から若さを取り戻して、81歳になったらその時の気分次第で、爺様ごっこをまたするからね」決~めたっと!