閉門即是深山 500
栗の美味しい季節
栗の名産地、第一位は栃木県の笠間と聞いたことがある。つい先日のことだが、赤坂オフィスのすぐ傍の喫茶店に入ると、私の一番若い友人の好青年が入口付近でアイスコーヒーをすすっていた。
この店、オーナーが変わって何年か経つが、最近では、カレーで有名になった。確かに美味しいカレーで、出し方も他店では見ないような盛り付けで出してくれる。どうも、美味しい店探訪のテレビ番組で取り上げられたようで、それで若い女性のお客も増えたらしい。
実は、ここのマスターの本職は、マスターの口を借りれば珈琲の有名卸問屋で「凄腕のセールスマンだった」らしい。その証に大手による珈琲講座の講師として、彼は今も珈琲の選び方、入れ方、店の経営まで教えていると聞いた。
常連は、結構昼メシ時を避けてくる。朝仕事で立ち寄る常連、朝オフィスに入る前に立ち寄り知り合いと喋り、帰りにタバコと珈琲を楽しむ私みたいな常連、無秩序に1日ここで過ごしているのではないかと思われる常連、さまざまだが、互いに話をするが個人的な中に踏み込まない掟があるように、常連たちは、スマートである。タバコが席で吸える。煙草好きにとっては、この店はオアシスである。
タバコブースがあるチェーン店は、あちこちにあるが、喫茶と煙草のセットを楽しむ店は少なくなった。どうも、お役所の陰謀で「席で客に煙草を吸わすなら、従業員は家族以外に使ってはまかりならぬ」との御触れがだいぶ前に出たらしい。ゆえにこの店、従業員はマスターのみなのだ。お客も承知だし、この店が煙草を吸わすことを止められると困るので、普段はやったことも無いような人でも常連たちは、自分の使ったテーブルは、拭いて帰る。それも、楽しそうに拭いている。
この店が素晴らしいのは、以前のママの時代からの常連客が気持ちいい人ばかりだからだ。私は、67歳から10年以上月曜日と木曜日は、ドラムの稽古練習日と決めているから、この店に来られるのは、週に3日だが、かなり多くの知り合いが出来た。
このイケメン若者と出会ったのもこの店だった。この若者、背が高いし、イケメンだし、心の底に美しい正義感と素晴らしい心を持っていて、頭も良く、たぶん若者たちを束ねる会社の社長をしていると聞く。しばらく私は彼と与太話をしていた。彼が急に立ち上がった!「Nacky!まだ居るでしょ!ちょっと美味しいモノが送られてきたから、家に戻って取って来るから、それまで待っていて!」脱兎の如く店を飛び出して行った!やがて手に、大きな袋を持って帰ってきた。話の前に説明するが、Nackyとは、私の渾名でドラムのバスドラムの表面にも書いてある。公認の渾名である。
彼は、開口一番「ボク、栃木笠間の栗林を相続しちゃったんです。日本一の栗です」その後、栗の皮のむき方や渋皮のむき方を懇切丁寧に伝授してくれた。日本人はこれから地産地消じゃないとね!彼は「老人は、危ないから剥いておきましたから!」と言って立派な笠間の栗、本当に旨かった!また送って来ると聞いて、次も剥いておいてね!と言った。