歳の祝い事 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 482

歳の祝い事

77歳は、「喜寿」の祝いらしい!60歳(数え年で61歳)は「還暦」といい、70歳になると「古希」という!
私は、疾の昔に還暦も古希も過ぎてきた。なにも祝い事などしなかった。

還暦になると、よく赤いちゃんちゃんこを着せられる。還暦の字を分解してみると「還」=めぐる、と「暦」=こよみ、となる。60歳で暦がめぐるのかも知れない。61歳は「赤ちゃんに帰る」、戻るのだ。だから、赤の着物や赤の座布団などを贈り物とする。
古希は、紫の色を贈るという。紫は、高貴な色で虫がつかないと聞いたことがある。
江戸時代の警察組織は、町奉行や与力、同心が勤めた!銭形平次や右門捕り物帖などの岡っ引きは、警察組織に入っていない。岡っ引きは、十手などは持てなくて、鉄の棒で戦った!与力や同心は、刀が二本刺しであったが、十手を持たされていた。これは、戦う道具というより支持する道具に近い。今の警察手帳みたいな役目でもあった。十手には、色の違う房が付いていて、その役職の格を表していた。紫のついた十手を持つ与力は、格上とされた。大泥棒でも、紫の房のついた十手をみると「へ、へへへ、へい!」となったろう。

私は、来月77歳になる。「喜寿」になるわけで、奇数はおめでたい数字とされていて、それが重なればなお良いという。七がふたつ重なっている。贈り物には紫色を選ぶ!
80歳は、「傘寿」。傘の字を略すと「八」と「十」となるわけだ。もうこうなると格が相当高くなる。家で家族から、どんなに下にみられても、例えばポチより下に見られていても、世間では、格が上なのだ!贈り物の色は、黄金色!高島屋や三越などの有名百貨店の上階に金の売り場がある。金の茶壺や金の茶釜、金の杯、金のぶつぶつの付いた仏壇の前に置いてチンと鳴らす金の「おりん」。どれも値札を見ると目が飛び出しそうに高価である。まぁ、普通の人は。ドン・キホーテで売っている金塊のおもちゃでお茶を濁してもいいのでは!
88歳は、「米寿」!傘寿と同じように「八」「八」「十」で「米」になる。贈り物は、80歳と同様に黄金色。90歳が「卒寿」という。なにも「人生、ハイ卒業!」と、いう意味ではなさそうだ。「いや、早く卒業しろ!」と、いう意味かな!このお祝いの贈り物も、黄金色である。人生80歳を過ぎると黄金で囲まれるようだ。それこそ、タイの仏陀様のようだ!
99歳は、「白寿」という。「百」から「一」を引くと九十九歳、おめでたいらしい。贈り物の色は白で、白は一番格式の高い色だそうだ。なにか白の着物を贈られて、着てみたら、そのまま棺桶に入れそうだ。

なぜ、61歳からお祝いがあるのだろうか?戦後、昭和の20年代頃までは、平均的な寿命は、60歳くらいだった。私の祖父が昭和23年に59歳で逝った。私が父に「お爺ちゃんは早死にだったんだね」と言ったら、父は「あの頃は、そんなものだったよ、普通だったよ」と言った。だから、61歳おめでとう!となる。古希や喜寿、傘寿なんて迎えられる人なんて、本当に少なかった!金塊も贈らずにすんだわけだ!名前だけだったのだろう。
今や日本の平均寿命は、世界一!「白寿」の次の字を作っておかねばならないだろう!それとも、もう要らないか!