閉門即是深山 479
贈られてきた本
5月の連休に入る時だった。山陽放送から一冊の本が贈られてきた。今年は、文藝春秋創刊の年だから文藝春秋から創業者の私の祖父菊池寛の本が2冊文藝春秋から出版されることになっている。1冊は、このブログで以前紹介した門井慶喜氏の著作『文豪、社長となる』で、もう1冊は、『月刊文藝春秋』で現在連載中の鹿島茂氏の『菊池寛アンド・カンパニー』である。
祖父が文藝春秋を起こしたのが、大正12年、30代の半ばだった。山陽放送から贈られてきた本は『輝ける讃岐人2』という題が付いている。表紙には、6人の顔写真が載せられている。本の発行人は、公益財団法人山陽放送学術文化・スポーツ振興財団と書かれていた。
パラっと1枚のコピーが落ちた。令和5年4月吉日とあり、担当の方のお名前が書かれてある。私は知らなかったが、昨年4月から12月まで10回にわたって開催されたリレー・シンポ『輝ける讃岐人』という催しがあったらしい。その時の講演の記録集で2巻目の中に祖父に関した話があるように書かれていた。
表紙の写真には、その方のお名前が書かれている。向かって左上段には、小西 和氏の写真がある。プロフィールには、小西氏は、明治44年瀬戸内海の魅力を『瀬戸内海論』の題で出版し、その後衆議院議員として瀬戸内海を国立公園としたと書かれている。この小西 和氏の人物像を関西学院大学総合政策学部教授の佐山 浩氏が講演されたのだ。
上段中央には、田村 剛氏の写真がある。田村氏は、1890年に岡山県で生まれた、造園学者で日本の国立公園や海中公園の制度に尽力を尽くした人で、奈良県立大学地域創造学部の水谷知生教授が講演された。
上段右には、大久保諶之丞(じんのじょう)氏の顔写真がある。大久保諶之丞氏は、明治22年に瀬戸大橋構想を提唱した人で知られている。また、この章では、現在の四国電力の親、景山甚右衛門のことも書かれている。大久保のことを「史料から見た大久保諶之丞」と題して、香川県立ミュージアム学芸課長の野村美紀氏が講演、香川近代史研究会会員の宮本義行氏が「讃岐鉄道の父と備讃交通に関わった男」と題して講演をしている。
景山甚右衛門の写真は、表紙下段の右にあり、中央が祖父菊池寛の顔写真が載る。そして、右が保井コノ氏の写真である。この二人を題材にした頁が183頁から奥付前まで続く。本には「文学賞と科学賞を残した2人」菊池寛 保井コノとある。
菊池寛は、芥川龍之介賞と直木三十五賞を、「女が学問なんて」と言われた時代に女性科学者の道を歩み、日本初の女性理学博士となった保井は「日本のマリー・キューリー」といわれていた。
菊池寛を題材に「菊池寛と薄田泣菫(すすきだきゅうきん)」と題して青山学院大学文学部教授で、現在、菊池寛研究の第一人者片山宏行氏が講演をし、菊池寛の東京帝大予科の同級芥川龍之介や久米正雄、また、菊池が思っていた夏目漱石や森鴎外、話には樋口一葉や島崎藤村、太宰治まで登場してくる。写真や『真珠夫人』の原稿、菊池寛から薄田泣菫への手紙などが満載されている。演題「日本のマリー・キュリー保井コノ」は、吉祥瑞枝氏の講演である。講演録集は、讃岐歴史資料として良書である。定価1500円+税
■輝ける讃岐人2(吉備人出版)
https://www.kibito.co.jp/book/978-4-86069-707-5