閉門即是深山 366
似てる?
正月の三が日のいつだったろうか?
たぶん元旦だったと思う!読売新聞を開いてギョッとした。3段抜きで、爺さんの写真が載っていたからだ。文藝春秋2021の賀正広告だった。
1枚の写真は、大きくマスク姿の爺さんの写真が、後は、どこにあったのだろうか私の記憶には無い正面顔の写真が載っている。文春だから創業者の菊池寛の写真が沢山あって、私の知らない写真があっても不思議はない。40代中ごろから50歳前半のような感じがする。大きな文字で『活字のなかに「人間」がいる』と書かれていた。編集者ならば一発で判るメッセージだが、一般の人に通じるかな?そう思いながら読んでみた。
ちょうど百年前の世界もパンデミック禍に襲われた。スペイン風邪である。社の創業者である作家の菊池寛は「マスク」(「改造」大正9年7月号)という掌篇を発表する。
心臓に疾患をもつ「自分」は、病いへの恐怖から家にひきこもる。
神経質になり人びとがマスクを外すようになっても外せなかった。
流行が収まりかけ、ようやくマスクをとって野球見物に赴くが、
一人の青年がマスクを掛けているのを見て「不愉快な衝撃
(ショック)」を受ける。
──突き出て居る黒いマスクから、いやな妖怪的な醜さをさえ
感じた。
ついこの間までの自分と同じ青年の姿に、たじろいだのはなぜか。人間心理の不思議に迫る菊池寛の筆は今読んでもあざやかだ。
その下に「マスク」と題した文春文庫の写真と620円+税、電子書籍も発売中とある。
二〇二一年も文藝春秋は、人間の変わらぬ面白さを、ジャーナリズムで、文藝で、そしてデジタルで、読者の皆様に伝えます。
と、書かれていて、現在出版している雑誌や本の名が書かれている。私が、在籍していた時よりかなり増えているようだ。
『文藝春秋』『文藝春秋digital』『週刊文春』『週刊文春WOMAN』『文春オンライン』『Number』『Number DO』『Number Web』『CREA』『CREA Traveller』『CREA WEB』『オール讀物』『文学界』『別冊文藝春秋』『文春文庫』『文春新書』これに毎月出版される単行本を入れると、だいぶ多くなった。この広告の写真を見た人たちから「やっぱり君はお爺さんに似てるね!」というメッセージが沢山届いた。
私がこの広告を見て気に入った言葉がある。たぶん爺さんもこの言葉を喜んで見ているだろう!それは、菊池寛が文藝春秋という会社を創立した要であり、100年近くもその思いが継続されているからだ。それは「人間の変わらぬ面白さを、ジャーナリズムで、文藝で、そしてデジタルで」の部分である。話は、ちょいと横道に逸れる。自民党と言うか菅総理と言うか、「やっちまったなぁ~!」人間の命と日本の経済を天秤にかけてしまった。オイオイ!やっちまったなぁ~!これが人間の面白さなんだろう、ね!