閉門即是深山 346
差別
「ボクの里は山口県なんですけど、先日田舎の母にこの夏の帰省を話すと東京モンは帰ってこないで欲しいんだよ、もし東京に居る息子が帰省したとかご近所に知れたら、私たちまで村の誰とも会えなくなっちゃうからね」と、私がいつも立ち寄る喫茶店の珈琲友達が隣の席から私に言った。「特に、私の兄は現地で役所勤めですからね、里に帰っても兄ともきっと逢えないでしょうね」彼は続けた。
新型コロナウイルスの東京での感染者は、東京ドームの客席の5分の1程度である。東京モンは、皆結構注意をしていて、私の住むマンションの中でも皆マスクを外さない。ラウンジに置かれたソファーでも、以前のように大勢が顔を突き合わせ大声で喋る者もいなく、ガランとしている。確かに駐車場を見ると多くの住人家族が居るはずなのに、共用スペースは、この1月、2月とは完全に違っている。
老人たちは、もっと注意深くなった。外食は、しない。マスクは常にかけており、ひとと話す時も1~2メートル幅をとって話す。マスクをして幅をとった老人の会話は、なかなか面白い。両者とも耳が遠いから、内容が判らなくても会釈をする。若いひとがその場に居れば、通訳をしてもらいやっと何を言っているかが解るのだ。老人たちは、コロナに襲撃されれば、あっけなく死ぬと恐怖している。
しかし前にも書いたが、ある学者の話では、コロナで亡くなった方々の平均寿命は、日本人の平均寿命とほぼ同じらしい。と言うことは「コロナでは死にたくない!自然や病で死ぬのはしょうがない」と言っているのと同じだ。
確かに、伝染病であるから、家族と死に目会えない。しかし、それは家族側の問題で、本人はどちらにしても“もう分からない”に違いない。
私も以前からめったに新宿に行かなくなった。池袋も行かないし、渋谷は、電車や地下鉄を乗り換えるばかりである。私の住む地域から新宿、池袋、渋谷に行くにも4、50分はかかる。人口は多いが、東京は広いのだ。コロナに知り合いが感染したなど聞いたことがない。知り合いの知り合いもない。しかし、地方の方々が「東京モンが来たら嫌だ!」と思う気持ちも、よく解る。ここに地域的差別が生まれる。
昨年の夏に癌の手術をした友人がいる。最近の夏は暑くなってきて、まるでタイに居るようだ。友人は、この夏のために八ヶ岳の近くにシーズン貸別荘を借りた。何頭か犬がいるので車で出かけたと思う。また、躰が弱く軽井沢別荘に別荘を建てて、夏のシーズンは必ず行く友達も居る。彼女に「軽井沢町長が出来れば来て欲しくない」というようなことを言ってたよ、と伝えたら「軽井沢にも税金払っているのに!」と怒っていた。どちらにしても、何年か、しばらくは東京モンは静かにしていた方が良いみたいだ。
7月中旬からの”GO TO”キャンペーンは、ひどい話だ!「東京在住者を除く」とある。地方税と違うのだ、国税でやるのだ!憲法で保障される「法の基の平等」は、どうしたのだろうか?官僚の出納係も困るのではないか?国の金を使うには、法的根拠が必要だろう。その根拠が憲法に抵触していたらと思うと、ぞっとする。今の政府は、憲法も無視してやりたい放題なのか?マスコミもこの点を叩かない!明らかに票集めの為なのにね!