閉門即是深山 333
LINEで酒のもう会??
長い、長い、自宅待機の間、バンドの連中からメールで「LINEで集まって酒飲み会をやろうよ!」と連絡が入った。
私は、何度も書いたが、生粋の下戸である。みんなで居酒屋に行っても、ビールも酒も呑めず、コーラかジンジャーエールを飲む!LINEで飲み会?テレビのニュースで観た気はするが、やり方が全然解らない!私より機械音痴の小学校からの友人は、懇切丁寧に教えてもらっているようである。
よーし、自力でその「LINEの飲み会」とやらに入ってみるかと思い、ベランダの掃除を家人に頼んだ。植木の花の位置も変えてもらった。私は、なんでも形から入る性格なので、映る場面の設定から始まった。着る服も自宅らしく、またオシャレなものが良い。飲み物は、カメラ映りの良いカップに三ツ矢サイダーを入れた。以前百均で何に使うか判らないままに買ったスマホ立てを探すのに、ひと騒ぎしたが、やっと準備は整った。ベランダだから、皆と話す声が漏れては成らじと、何か大げさなヘッドフォンを頭に載せた。そして、気がついた!どうやってLINE飲み会に行けばいいのか、その道のりを聞いていなかった。
いまさら聞くのも恥ずかしい、また機会音痴の友人のようにもなりたくはない!スマホがPONと音を立てた。会が始まる5分前だ。私の周りには、家人が渋々用意してくれた花々が綺麗である。サイダーは、随分前に用意してしまったので、炭酸の泡がもうたたなくなっている。せっかくセットした頭は、スマホと格闘したせいで寝起き同様になっていた。
スマホをいじっていると突然「友達になる?」と文字が訊いてきた。当たり前じゃないか、こんなに一生懸命、髪振りみだして、なぜそんなことを今さら訊くんだ!馬鹿者とタップしたら、勢いあまってスマホを倒し、取り込んだ洗濯物の私のパンツの上に落ちた!「すまん、すまん、遅れてしまって!」皆が、会話を楽しんでいる中に私が遅れて飛び込んでしまった形となった。ベースやキーボードの女性たちが笑っている。「結構派手なパンツ履いていらっしゃるのですねぇ」髪を振り乱し、せっかくの新調の有名メーカーのシャツをびしょぬれにさせて、四苦八苦して遅れ参じた私の体がせっかくの花々を隠してしまっている。それも、生まれて初めてのスマホの飲み会で用意万端を自分でぶち壊してしまった。
部屋の中から家人が私に向かって何か言いながら合図を送っている。ヘッドフォンをつけて会話をしている私には、何を言っているのか判らない。だんだん家人が怒っている顔つきになってきた。皆にちょっと待っていてくれと頼んで家人に何かと訊いた。「あなたの声が大きすぎて左右の家から文句がきてるわよ!そればかりじゃなくて、家中あなたの声がして仕事が出来ないじゃない!」
今日は、自粛のせいで近所の店がみな閉まっていて、息子夫婦が私たちの家に食事に来ることになっている。家人は、その準備にとりかかっているのだ!「そんなにデカい声か?」と訊くと「デカいなんてもんじゃないわよ、大声でケンカしてるような声よ」
私は、シュンとしてベランダの席に戻った!「大丈夫か?怒られてたじゃないか!今日は、このへんでお開きにするか」画面がぷつりと切れた。大失敗だった!