閉門即是深山 316
セッション
何年か前に[セッション]という映画があった。
若いドラマーが高い志をもって一流の楽団に入るのだが、その指揮者にイジメを受ける。強烈なシーンの連続でドラムをやっている私には、とても面白かった。私が参加しているバンドのほとんど皆が観たらしい。また音楽に興味を持たない人たちも結構観たという人が多かったから、いい映画だったに違いない。まだ観ていない人がいたら、ぜひ観ることをお薦めする。
かなり精神的圧迫感のある映画で、イジメの本質に迫っている。観た当初、なぜにドラムなのか? なぜドラマーを主人公にしたのか判らなかった。
昨年末、私は6年続けてきたジャズドラム科を一応卒業出来た。基礎科を3年、そして、ジャズの専科を3年やった。准上級を3年かけて卒業したのだが、楽器は奥が深いからとりあえずの卒業で、まだまだやることは、いっぱいある。個人授業だったが、ワンフレーズ教えてもらうのに、15分はかかる。とはいえ、まったく敲けない。先生の書いてくれた音譜を持って、スタジオに行き週に3時間を2回練習しないと、次の週の授業で合格出来ない。教えてもらったフレーズを連続で5回敲けないと、次に進めないのだ。これに15分かかる。なぜ5回か、5回連続で敲けるというのは、躰が覚えたことであることらしい。進むためには、いかに多く復習するかだった。
67歳で始めたが、多少仕事的な事も持っているし、1回の自己練習で3時間かけるのが体力的にやっとだ。一度1日4時間練習をしてみたが、最後の1時間は、何をやっているかボ~ッとして判らなくなった。私は、趣味に土日、祭日を使わない。長年添ってきてくれた家人に、仕事だと言っては休日を台無しにしてきたのだから、OBになった人生の最後は、家人に合わせる時間を作ることに決めた。故に、週5日の内ドラムに割く時間は、2日くらいが適当になる。それに参加しているバンドの練習も加えると、かなり時間を割く趣味になる。
先生は、有名なドラマーだった。優しかった! しかし、やっていることは映画の[セッション]と同じだ。毎週15分の試験を受け、通らなければ同じ事をもう1週しなければならない。ドラムは、敲けば音がなるから易しい楽器に感じる。が、ピアノ、ヴァイオリン等と変わりない難しさだ。とりあえず6年分のフレーズは、教えて頂いたが、それは、敲き方で速さでは無い。速さは、教えられないのだ。速さが無ければ、曲に乗せられない。速さだけは、自分で何度も何度も敲いて躰に覚え込ませねばならない。
先生は優しい! しかし、涙が出るくらい悔しい! 出来なければ悔しく涙が出てくる。なるほど[セッション]という映画は、ドラムじゃなきゃ表現出来ないし、ドラムだから真に迫ることが出来る。
1年くらい習ったことを繰り返し、次のステップに上りたい! 頑張るから、待ってて先生! 私は、今そう思っている。