閉門即是深山 305
「何かを忘れていないか」私達に語る詩人道造
エッ!新幹線の3分の1が水没だって?そんな危ない所に操車場を造るなんてJRは、何考えてんだ!
しばらくして、新幹線あさま号金沢行きが、間引き運転をするという情報が入ってきた。それも全席指定席無しである。だいぶ前に日本ペンクラブから送られてきた乗車券には、ちゃんと号車名や席番が印刷されている。クラブからの連絡は、どうなるか判らないから乗れるのに乗ってくれ!と言う。
前夜祭のレセプションは、18時からと予定表には記されてあった。今回は、裏方である。裏方役に割ける人数は少ない。女性は、楽屋でお茶くみや見張り番。大学の教授たちである。元サントリーの宣伝部長、有名大学の教授達と、とてもじゃないが普通だったら頭を下げなきゃならない連中が裏方に廻っている。昨年は、この企画《ふるさとと文学2018~菊池寛と高松》を総出でやってくれた。メンバーとしては、何が何でも行かねばなるめぇ!とハラハラしていたら、前日にペンクラブからまた連絡が入った。我々の新幹線は、ダイヤ通りに動くと言う。席も指定券通りだと付け加えられていた。被災地の方々には申し訳ないが、ホッと胸を撫でた。
軽井沢駅まで東京から1時間10分、同じあさま号でも特急だったころから考えると速くなったものだ。特急の頃は、2時間強かかった記憶がある。まずゾロゾロと軽井沢で降りた。日本ペンクラブの現会長の吉岡忍さんもいる。また、この企画の責任者大学教授もいる。
前夜祭会場は駅舎の脇で、私が40年前に週末に乗り降りしていた在来線の旧軽井沢駅プラットホームの見える所にあるワインバーだった。決起集会である。作家で元会長、今回のパネラーである浅田次郎さん、現副会長で立原道造の詩を朗読する下重暁子さん、映像ライブで語り(弁士)を勤める片岡一郎さん、映像にライブを重ねる若き気鋭なヴァイオリニスト佐藤久成さん、音楽家の森ミドリさんのお顔もある。
今回パネラーの役どころ作家小池真理子さんと加賀乙彦さんの軽井沢在住組は、明日本番の会場軽井沢大賀ホールに直接来られると言う。
このホールは、昔車でつづら折りの道路の碓氷峠を登ってホッとした所にスケートリンクがあった。夏には、よくその池でスワンボートに子供達を乗せて遊んだものだが、今や公園の美しい池として楽しまれているようだ、この池の裏手に800名強の座席を持つ音楽専用の音響バツグンのホールが15年前に建てられた。明日天気なら、満員になるはずである。
我々の宿は、新幹線でひと駅先の佐久平に取ってあった。乗れば10分の駅だ。東京からの車窓に真っ赤な夕焼けが見えた。くっきりと黒富士も観えた。ワインバーの外に出て暗い空を仰いだが、軽井沢名物の満天の星は惜しくも無い。25歳にして逝った詩人立原道造の音楽のような言葉を紡いだ詩を思い出した。
「願いは……あたたかい洋燈の下に しづかな本がよめるやうに!」