長い連休 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 280

長い連休

突然の10日間の連休、いかがお過ごしだったでしょうか?
私は、なんとなく、日本人は、特に私のような昭和戦後直ぐの生まれの人間は、長期の休暇に慣れていないような気がします。「連休は、嬉しいんだけど、どうしていいか判んなかったよ!」という声も聞こえてきそうな思いでした。

映画の場面やテレビニュースの情報で「アメリカやヨーロッパの人たちは、日常的に夏季長期休暇がある」と聞いていて嫉妬の思いを持っていました。しかし、彼らは、それが代々あたりまえで、郷里などに昔からの家を維持していたりして、都会からひと月くらい逃げ出す、リフレッシュするのが長い習慣になっているようですから、旅の宿を心配することも無さそうです。
まっ、日本でも別荘を持っているようなご身分の方は「ちょっと別荘にでも!」となるのでしょうが、日本では、その維持費も大変でしょう。映画では、長期休暇に郷里の家を家族総出でペンキを塗ったり、壁紙を貼り替えたりしている場面がありますが、あまり日本では見ない風景です。自分で家を造ったり、修繕したり、に日本人は慣れていないのでしょう。郷里はあっても、「爺さんも婆さんも死んじまってよ、家なんか廃墟だよ、廃墟!とてもじゃないけど住めたもんじゃねぇよ!」なんて日本人の口から出てきそうな言葉です。きっと、木造の家と石造りの家の違いなのかも知れませんね。

海外に行ければ良いのでしょうが、日本のような島国からでは、ちょっと国境を渡って隣の国まで遊びに行く、なんてことも出来ませんし、だから大事で、年寄りのカップルには、向こうで病気になったらどうしよう!なんて心配もしてしまう。じゃぁ国内は、高い、べらぼうに高い値段を取り、それもキャンセル待ちですよ~!なんて言われちゃう。

私は、月刊誌の文藝の編集者でした。最近では、新聞も休刊日がありますし、週刊誌も合併号と称して編集者も休みをとるようになりました。が、月刊誌は、休めない。それも文藝誌は、発売日が給料日近くですから、一番忙しいのが月末から月始めの10日ころまで。暮れも正月もあったもんじゃ無い。まして5月の連休なんぞ。でも哀しいですよ!皆が家族連れで、ルンルンして行く所を逆行して行くのは…。自分にも同じ頃合いの子供もいるし、悲しい顔を見せて「しっかたないか!」と溜息をつく女房もいる。それにも「編集者の宿命だよ!」と言いながら見て見ぬふりで、作家の家に原稿を貰いに行く。因果な商売。
編集者の平均寿命って短いらしいんです。これからは、家族のためにと思った時には、やはり唯ひとり天国に向かって行く。私なぞは、ラッキーな方だから、連休くらいは、趣味のドラム練習も休んで、罪滅ぼしとして、家族のそばにいる。いや居させてもらう。慣れていないと長いんだなぁ10日間。これからの人は、里を捨てずにちゃんと管理していた方がいいですよ!