閉門即是深山 260
拉致され、軟禁され、吐かされた次の日
「日本の各地に、文学のふるさとがあります。物語が生まれた村や町や都市。詩歌が育まれや地域。作家やアーティストが生まれ育ったところ、作品の舞台となった地方もあります。」
一般社団法人 日本ペンクラブ シリーズ企画《ふるさとと文学》のパンフレットの書き出しである。
「しかし、いま……。景気低迷と人口減少のあおりを受けて、町の本屋さんが次々と消えています。図書館の予算も十分ではありません。通りから人の息遣いが消え、町全体がひっそりしていませんか?」文章は続いていく。「子どもたち、若者たち、大人たちよ。スマホは便利だけど、現在しかわからない。本の世界には過去があり、未来があり、何より想像力がある。物語のなかでは、きみと同じ人間、あなたに似た人が生きている。日本ペンクラブのシリーズ企画《ふるさとと文学》は、作家と作品に〈ふるさと〉と〈歴史〉と〈現代〉の光を当て、映像と音楽と語り、朗読と討論でライブ・ステージ化する文学の饗宴です。村よ、町よ、都市よ、元気になれ!」パンフレットの表紙は、こう結んでいます。そして、2015年に始まった「島崎藤村の小諸」次の年の「石川達三の秋田」去年の「川端康成の伊豆」とこれまでの催しが書かれ、…そして、いよいよ今回の「菊池寛の高松」である。と紹介されます。
高松駅前のサンポートホール高松 大ホールの入口には開場前から200人近いお客様が並んでくれました。3階まである大ホールですが、演奏会やオペラではありませんから、最初から1階だけにしよう、それでないと出演者の顔も見えないからね。と、いうことで1階800名で満席としようと考えていました。
ところが、どっこい!でした。前日の四国新聞のコラム「寄稿」に吉岡忍日本ペンクラブ会長が【シンポジウム「ふるさとと文学2018~菊池寛の高松」に寄せて】を書いて頂いたおかげで900名以上のお客様が会場に足を運んで下さったのです。四国新聞のタイトルは、『ふるさとの宝 堀り進める』でした。
これだけのお客様が来られれば、楽屋は大騒ぎで熱気がムンムンとなります。司会の進藤晶子さんの頬もピンクに染まっています。若き天才ヴァイオリニスト佐藤久成くんの顔も稽古場とは違った!神田松之丞さんの大師匠 神田松鯉さんも着物に袴、ポンと帯を叩く!菊池寛が自己満悦の戯曲『閻魔堂』の朗読のためお坊さんの衣装をまとった中村敦夫さんが舞台袖で出番を待つ。場内1階と2階が満席で割れんばかりの拍手で幕が開いた。乗った!乗った!乗り切った!緞帳が下りた。舞台の下手袖は、終演を待つ吉岡忍会長に出演者のハイタッチをする人、抱き合う人で大渋滞になりました。皆が興奮状態にいるのです。お客様とシンクロした喜びです。
「素晴らしい公演だった、菊池寛のことがとてもよく分かった!」
沢山の称賛の声が、お客様から届いています。