閉門即是深山 259
拉致・監禁か?軟禁か?
11月9日のことだった。新幹線に予定より30分早く飛び乗れた。高松駅に着いたのが2時25分、約束が3時なので、駅前にある定宿にチェックインして珈琲の一杯でも飲めると高をくくっていた。それが間違いだった。
荷物をフロントに預け、チェックインをした時、後ろから襲われ黒のワゴン車に乗せられた。目隠しも、手枷、足枷もされなかった。黒のワゴン車は、NHK高松の通用口で停まった。そのまま私は、テレビのスタジオに軟禁され、カメラに赤いランプが点いた。私は、ビックリしてそのカメラを睨み返した。スタジオは、あまり大きくは無い。自分にスポットが当たっているために、周りは見えないが、どうも正面に固定のカメラが一台と、従来型の人間が動かすカメラの2台があるみたいだ。どこかのブースで、固定型カメラをコンピュータで操作しているのだろう。
私の後ろにはボードが置かれていて【①基調映像「ある自由主義者の走馬灯~菊池寛の人・作品・世界」】とあり、その下に語り:神田松鯉(講談師)演奏:佐藤久成(ヴァイオリン)構成脚本:吉岡忍(作家)映像制作:四位雅文とある。次に【②菊池寛「閻魔堂」】朗読:中村敦夫(俳優・作家)とあった。最後に【③パネルディスカッション「菊池寛の高松」】阿刀田高(作家) 下重暁子(作家)松本侑子(作家・翻訳家)菊池夏樹(高松市菊池寛記念館名誉館長)山田健太(進行/専修大学教授)とパネラーが書かれている。どうも明日催される話をするらしい。
「気楽に、気楽に」と急に現れた伊丹 新アナウンサーが言ったのには、驚いた。暗くて誰も居ないと思っていたのだが、隣に座っていた。よもやま話をおよそ8分24秒話をしていたら、どこからか「じゃ、本番行きま~す!4、3、2、1」それからが覚えていない。何か伊丹さんに向かって話していたのだが「は~い、ご苦労さま~!」天から声が降りて来た。
暗いスタジオの中、私は、背を押された。目隠しも、枷も無い。螺旋階段というよりポールダンサーが踊るポールによじ登る風に私は、2階に行くことを強要され、小部屋に入れられた。喫煙所のような大きさ、廊屋?独房?それとも尋問室?尋問室だ、向かいに刑事のような男が座り、大きな窓ガラスの外では、何人か見知らぬ人が中を覗いている。喋ろ!喋らんかい!出さんぞコラ~っ!私は喋った。何もかも、知っていることを全て30分も吐き出してしまった。後悔は無い。
収録された私の全ては、12月25日(火曜日)の午前0時15分から45分頃まで、全国ネットNHKの『ラジオ深夜便』で流すらしい。24日から25日に移った時だ。あくまでも予定で、精査して私のうめき声や喚き声が入っていたら編集に時間がかかるらしい。黒のワンボックスが、ホテルに着いた。解放されたのだ!日本ペンクラブ一座の皆は「テレビのローカルニュースに映った君の顔のどアップが良かったよ」とか「NHKが8分もやってくれた~!明日のイベント客席がいっぱいだね」と、私の拉致を喜んでいた。