閉門即是深山 258
偶然
ジャズドラムの先生には、半年間のお休みを頂いていた。5月の末から6月の頭に、救急車で運ばれ緊急手術を受けて、体力が無くなったからではない。
スパルタカスと、そっと渾名を付けた先生から何年かかけて続けて教えて頂いた打法が頭の中で消化されず、頭の中が通勤満員電車か高価な饅頭のようにハチキレそうになったからである。頭の中がそうだから、当然身の方に沁み込まず、習っても、習っても、覚えられない。時々、耳からも鼻からも、涙に混じって♪音符が体外にこぼれ出す。また、その次も新しい打法が来るから、自分でドクターストップをかけたのだ。それは、教えて頂く前から判っていた。「途中で半年くらい休みます。その間に先生から教えて頂いたことを繰り返し自習します。そのまま休まずに行けば、きっと僕は、気がふれるか、頭が爆発してしまうでしょうから2年後に半年休みます」ジャズドラムを習い始めた時に、スパ先生には伝えておいた。私は、こういう趣味や遊びのことになると緻密なのだ。
半年休暇は、もう終わる。スパとの再開は12月からだ。その間、どれだけ自習しただろうか。150時間は、練習に励んだと思う。すっかり暗譜したとは言えないが、音符を見れば敲けるほどにはなった。ふたつのバンドの新曲も覚えなければならないが、とにかく残る人生を満足させるためにも上手くならねばならない。70歳を過ぎてプロを目指しているわけでは無い。この「上手くなる」とは「そこそこ上手くなる」「アマチュアでもちょいと上手いなぁ~!」「70幾つの爺さんのわりになかなかやるジャン!」その程度のことだ。
自習、自己練習を少なくとも週に2回はスタジオを借りてした。時間は、3時間。ひとりでやるには、ちと長いが、逆に限度でもある。スタジオの人には、10分か15分音がしなかったら見に来て!と言ってある。死んでいる場合もあるからだ。こちらは、ドラムに座ったまま逝けるなら本望だが、あちらは嫌だろうから、頼んである。
さて、前の月曜日に、いつものように3時間練習をした。時間の10分前には、終わり帰り支度をするのだが、その日は、20分近く前からスタジオの外がザワついていた。ドアを開けると多くの人たちが空くのを待っていた。顔に見覚えがあった。18年前に結成したジャズのビッグバンド砂田BBの面々とジャズ歌手の麻生ミツキータ光希さんだ。12月18日火曜日、六本木SATIN DOLL(開場18時 @5000円)で「ゴージャス&ハートフルな一夜♫BBサウンドで最高のヒトトキ」ってスタジオの入口で偶然に、初めて出会ったミツキータさんの宣伝になっちゃった!