嵐 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 208

10月、各地に大きな爪痕を残した台風21号の一週間後に22号が日本列島に攻めてきた。やはり土日であった。土曜日は、日本ペンクラブと大田原市の共催で講演会が開催された。第15回大田原市文化サロンである。
今年のテーマは、大田原マラソン大会に因んで「走る文学」とした。講演は『「走る」という希望』の演題で三浦しをんさんが行った。三浦さんは、基本的に講演をしない方と聞いた。珍しいことだった。たぶん大田原市民は、ものすごく得をしたに違いない。対談は、癌で死の直前を経験し、今ではマラソン狂として多くのマラソンの著書を持つ大久保淳一さんと、先代三遊亭円楽師匠のお弟子でマラソンの落語家と言われる三遊亭楽松さんであった。台風が迫って来て、ひやひやものである。日帰りの旅であった。予想では、日曜日の夜半から月曜日の朝に関東地方に来るという。

翌、日曜日は朝から土砂降りである。日本競馬会、JRAの前会長(前理事長だったかも知れない)に可愛がっていただき何年か前からご招待を受けてきた。その年でメインレースは違うものの、私にとっては年に一回の競馬である。何としてでも行きたかった。雨の中、府中競馬場に向かった。『第156回 秋の天皇賞』である。11時過ぎに、貴賓室に入った。普通では、なかなか入れないところである。大きなロビーに馬券を買う機械、馬券を払い戻す機械、“すかんぴん”になった時に、お金をおろすATM、馬券を買うカウンターまで専用に設えてある。また別の場所には、ホテルオークラが運営するカウンターで飲み物を買うことも出来る。部屋は何部屋あるのだろうか。ひと部屋が結婚式時に新郎新婦の家族が集う部屋くらいの大きさ、ベランダが付いていて競馬場が見下ろせる。部屋にもモニターがいくつもあり、同時に開催している京都競馬や新潟競馬を映し出している。メインの画像は、リアルに今、下で行われている競馬を映し出しているし、結果や配当も映し出す。至れり尽くせりの部屋である。
到着した時は、5レース目であった。私は、いつもご招待を受けるお返しとしてJRAが一円でも得になるように考えて買うのだが、毎年、とんとんか、少々の小遣いを頂く。メインは、11レースの天皇賞で、ここに御礼のお金を、いや馬券を買う。さて、一年に一度だから馬券の買い方も忘れているからと、手慣らしのつもりで6レースを買ってみた。祖父・菊池寛の競馬の友であった作家の吉川英治氏に見習って、1日の賭け金を右ポケットに入れておいた。もし、もしも配当を貰ったら左のポケットに入れるつもりだ。6レース1日使おうと思っていた金額以上の配当が左のポケットに入った。天皇賞もその日どのレースにも勝てなかった武豊が一着に入った。武は天皇賞に絞り、雨で超重馬場を調べていたに違いないと武から流した。天皇賞にも私は、勝ってしまった。欲の無い時に、金は戻って来るのだなぁ!