閉門即是深山 189
今、夢中になっている本
いつもの喫茶店でコーヒーを楽しみ、莨<たばこ>を楽しみ、好きな本を楽しんでいることは、今までにも幾度も書いた。
今、講談社から昨年の暮れに刊行された浅田次郎著の『天子蒙塵』に夢中になっている。
この本は、氏の著書『蒼穹の昴』、『珍妃の井戸』、『中原の虹』、『マンチェリアン・リポート』各シリーズの続編にあたるようだ。全てをまとめて『蒼穹の昴』シリーズと言ってもいい。浅田次郎氏の中国の物語は『蒼穹の昴』から始まった。単行本で上下巻、文庫本で4巻もある壮大な大河ドラマである。貧しい少年春児は「汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう」と言う占い師の予言を信じ、都に上った。人間の勇気と希望を描いた大作である。
『珍妃の井戸』は、列強の国々に蹂躙され荒廃した清朝末期の北京。紫禁城でひとりの妃が無惨に命を奪われた。美しい妃はなぜ、誰に殺されたか?あまりに切ない真実とは──。
『中原の虹』4巻本は、英雄たちが、大地を駆ける!「汝、満州の覇者となれ」と予言を受けた張作霖。勇敢、剛胆にして繊細なひとりの男が馬賊の長となり、さらなる覇権へ挑む。北京で西太后が死を迎えんとし、春児と文秀にも新た運命が──。
『マンチュリアン・リポート』は、昭和3年6月4日未明、張作霖を乗せた列車が、日本の関東軍によって爆破された。この暴挙に昭和天皇は激怒し、「真実」を知りたいと願った。「事件の真相を報告せよ」昭和史の闇に迫るミステリーである。
そして、今回1,2巻が発売された『蒼穹の昴』シリーズ第5弾、『天子蒙塵1』『天子蒙塵2』である。2巻目の最後に(第三巻につづく)とあるが、未刊であるし、書店に訊いてもまだ予定が出ていないと言う。何刊続くのだろうか?
『天子蒙塵1』の帯表には「史上最も高貴な離婚劇。自由をめざして女は戦い、男はさまよう。ラストエンペラー・溥儀と二人の女。時代の波に呑み込まれた男女の悲劇と、壮大な歴史の転換点を描く」と書かれてある。また裏には、「家族とは何か。自由とは何か。清朝最後の皇帝・溥儀は、紫禁城を追われながらも、王朝再興を夢見ていた。イギリス亡命を望む正妃と、史上初めて中華皇帝との離婚に挑んだ側妃とともに、溥儀は日本の庇護下におかれ、北京から天津へ。そして、父・張作霖の力を継いだ張学良は失意のままヨーロッパへ。二人の天子は塵をかぶって逃げ惑う。」
浅田次郎氏の小説の中には、いつも私に教えてくれる大事なひとことが含まれている。今回の『天子蒙塵1』の中にも二か所あった!字数の関係で次号に書くことにする。