閉門即是深山 181
コンピュータの功罪
スタバやカフェに行くと若いサラリーマンたちが小型のコンピュータで何かをしている姿をよく見かけるようになった。何をしているかどうかは判らないが、コンピュータの扱いは丁寧でケースなどに入れて、振動や衝撃を防げるような手提げのバッグにしまっている。スマホも同じで、おしゃれなばかりではなく、壊れるのを防ぐためにケースに入れている人が多い。息子が私の住む同じマンションに越してきたときなど、他の物は運送屋に頼んだらしいがコンピュータと大切にしているギターの何本かは自動車で運んで来た。同じマンションでも敷地が広いし棟も違うために、彼らの生活を覗いたわけではないが、きっとコンピュータを一番大切なモノとしているのは想像がつく。
私の若い時分昭和30年代には、当然だがコンピュータはこの世になかった。16歳のころ軽自動車の免許証が取れた。自動車が手軽な時代ではなかったが、結構軽免許証を取った連中が多かった。私も、そのひとりだった。中古のマツダ・キャロルという360CCの4人乗りリアーエンジンを買った。父は、両観音開きで有名なトヨペット・クラウンだった。当時は、それも大型の車だったが1500CCだった記憶がある。軽自動車を買ったら、父が先生となった。
まずエンジンの点火プラグの掃除だ。4気筒だから順番を間違えないようにしなければならない。抜いたプラグに溜った煤を綺麗な布にベンジンを湿しカーボンを拭きとる。そして、ゲージで点火部分を測る。プラグも高価なモノだったから長持ちさせなければならない。次がタイヤだ。4本のタイヤをクロスして入れ替える。ジャッキで持ち上げ泥だらけになってやったものだ。今はどうだろう!プラグも触れない。タイヤを定期的にクロスに入れ替えている姿も見かけない。これは、車にコンピュータを載せたお陰というかせいである。
今の自動車は、コンピュータで制御されている部分が多い。特に最近では、ガソリン噴射のタイミングやセンターラインからの位置、スピードの制御、自動ブレーキなど様々な余計なところまでコンピュータにやらせる。車はガタガタ路も走る。温度も暑い場所から寒い場所まで走らされる。そこに壊れやすく繊細な機械であるコンピュータを載せ、それに人間の命まで任せようとしている。機械は壊れるのだ!特に、皆が気を使って大切にしているコンピュータに生死を任せるのだ。無謀だとしか思えない。コンピュータ制御しているからコンピュータが車の頭脳になる。暑い日寒い日ガタガタ路に耐え抜くコンピュータがあるだろうか?新しく買った何年間は良くても、すぐに調子が狂い出したら今以上に生命に危機をもたらす。文字の通り「危険な機械」に変貌する。新しい事故の始まりかも!