ひと夏の想い出 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 148

ひと夏の想い出

暑いですね~ぇ!残暑ですね~ぇ!
今年は、春があったのかしらん。なにかコートを脱いで、すぐに半袖のシャツを引っ張りだしたような思いがあります。今年は、秋がくるのかしらん。麻のジャケットの上にコートを着るようになるのかもしれませんねぇ!

私は、タイの国が好きで、40回近くもバンコクに往き来しましたが、タイの国に日本が似てきたような気がします。タイにも雨季、梅雨のような季節がありますが、昼間はカンカン照りでも夕方になると30分か1時間、もの凄いスコールにみまわれます。大雨が去るとまたカラッとするのです。タイは、暑くて寝苦しいように思われていますが、そんなことはないのです。スコールが去ると空気が爽やかになるのです。日本は、タイ化しているのかも知れません。

残暑と言えば、私の子供のころ、そうテレビが無かったころからやっと白黒テレビになったころ、伊達メガネをして口髭を生やしてソロバン片手に「ざんしょ!ザンショ!さいザンショ!」と言っていた有名な芸人を思い出します。

さて、「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり!」どなたもいつか接したことのあるフレーズでしょう。もし、今年の夏の大ニュースをいくつか挙げろと言われたら、参院選や内閣改造、都知事選や芥川賞・直木賞の話ではなく、私は、赤坂オフィスの裏にあった讃岐うどんの店が店じまいしたことを第一に挙げます。
私は、讃岐高松にある菊池寛記念館の名誉館長をしていますから、年に最低でも3~4回は高松に仕事で行きます。そして、本場の讃岐うどんを食べる機会があります。が、閉店した赤坂の讃岐うどん屋ほど旨い店に出会ったことはありません。もちろん東京にも多くの讃岐うどん店はありますし、全ての店に入ったことがあるなんて豪語できませんが、店じまいした“うどん店”は、どこにも負けないくらい旨かった。旨かったと言えば、やはりオフィスの傍にあった「百万石」という小さなトンカツ屋さんも何年か前に店じまいしてしまった。ここも、全国一旨いと思って通ったトンカツ屋さんでした。諸行無常の響きです。全ての人間の行いは、常は無いのですね。これ一生物だから買っちゃった!なんて言う人がいますが、一生物なんて無いもですねぇ!諸行は、無常ですもの。

まっ、小さなニュースですが、ニュースなんて小さいほど良い。それだけ無事だったということですから。

この夏はいろいろとありました。まずリオのオリンピック。陸上の400メートルリレー興奮しましたね。日本人が陸上競技で表彰台に立つなんて考えもしなかった。きっと体格がよくなったせいでしょう。バトンの受け渡し方法の技もテレビで解説していたように匠技です。実は、学生時代に私は短距離の選手でした。100メートル、200メートル、そしてリレー競技が私の得意な種目でした。
ちょうど前回の東京オリンピックの少し前のことです。いろいろな大会に出場しました。不思議なことに決勝に残るのは、ほとんど同じ顔触れです。私は、決勝でよく目黒高校の飯島選手と走りました。どうしても胸ひとつで彼を抜けませんでした。昔の賞状を見ると、私の成績は常に2位か3位です。その後、飯島選手は、オリンピックに出場しました。彼は、後に野球界に入り、確かロッテオリオンズだったと思いますが、今どうしているでしょう。
バトミントンのペアも凄かったですね。卓球もレスリングもシンクロも柔道も日本の「なでしこ」たちの頑張りには驚かされます。オリンピックがなくなると急にテレビ番組がつまらなくなりました。女子柔道、金四連覇の伊調さん偉かった。もくもくと練習に励んだんでしょうね。これが金四連覇の年だと知らなかったひともいたのではないでしょうか。吉田さんは、残念なことに金を逃しましたが銀を取った!立派ですね。なのに本人は泣いてばかり、表彰台でも泣いていました。あれじゃあ、銅メダルを取って喜んでいる選手が可哀そうですよ。吉田選手に貰い泣きしたひとは、いっぱいいたと聞きましたが、あれは如何なものでしょう。悔しければ、ひとりで泣けばいい。全てのオリンピック選手は、みな金メダルを目指して出場しているわけだから、悔しいでしょうが、吉田選手の態度に疑問が残りました。いろいろな大会で優勝しているテニスの錦織選手は、銅メダルをにこにこ誇らしげに翳していました。スポーツ選手だなぁと思ったものです。

沢山の台風が来ましたね。東北や北海道も暑くなり、私の先祖の住んだ熊本あたりは、豪雨にみまわれたり、猛暑だったり。

8月23日に東京新宿の紀伊国屋ホールで春風亭小朝師匠による『菊池寛が落語になる日 VOL.2』が満席でした。祖父・菊池寛の短篇小説『鼠小僧外伝』と『妻は皆知れり』がとても面白い落語に化けました。『妻は皆知れり』は、時代を現代にしてありましたが、孫の私も読んでいませんでした。読んでみようと思っているところです。次回は、12月26日月曜日だそうです。偶然にも菊池寛の誕生日の日でした。
8月26日金曜日に芥川賞・直木賞の贈呈式がありました。今回155回は、芥川賞に村田沙耶香氏の『コンビニ人間』(文学界6月号)、直木賞に荻原浩氏の『海の見える理髪店』(集英社刊)が受賞されました。会場は帝国ホテル孔雀の間、毎回1000名以上のお客様でいっぱいになります。

夏の想い出で次に挙げるとしたら、8月最後の週末に葉山マリーナで行われた我々のバンド、Red Shoesのライブです。マリーナの大きなヨットを動かし会場にします。その模様は、頁が無くなったので今度書きます。