3通の手紙 | honya.jp

閉門即是深山 93

3通の手紙

先週、週末から月曜日まで出張をしていた。
郵便ポストを覗くと、3通の手紙が入っていた。いや、もっと入っていたが、宣伝広告の部類と請求書の手紙の内容はここで書いても仕様がないので、3通の手紙とした。宣伝広告の部類の封書は、デカい鋏で封も切らずに私の住所や名前のところをバッサバッサと大胆に切ってゴミ箱に捨てた。請求書は、何かの菓子箱を利用してその中に入れておくことにしている。ほとんどが銀行自動引き落としにしているから、何かがあったときの証明のためにしばらくこの箱に保存しておく。捨てずに、箱にも入れずに封を切った封書が3通あった。

1通目は、私の出版界の先輩にあたるIさんが主催する文源庫からの手紙である。これは、ほぼ毎月送られてくる。3枚くらいのコピー用紙に毎月いろいろなOB編集者の随筆が書かれていて、また、毎月の例会の日時や今月の例会に誰が出席し、どんな面白話をしたかの寸評が綴られている。私も何度か随筆を書かせてもらったが、電話や何かでご依頼があったわけではない。
そのとき書かれている随筆の最後に丸カッコで(次回は、元○○書店の××さんです)と書かれているだけである。と、いうことは、毎月送られてくるこの封書を開けなければ、もしかすると次号は自分かも知れないわけで、ぎりぎりの催促で慌てなければならない。今月の書き手は、元徳間書店のO女史であった。
O女史は、有名作家から貰ったお洒落なネックレスからその作家の想い出話を語っている。私もその有名作家をグラビア取材したことがあった。記憶が定かなのは、話を聞いていた通り4人の作家たちと麻雀をしていた彼の有名作家は、麻雀をしながら寝てしまったのだ。その有名作家は、そんな病気を持っていた。
女史の随筆の中に、気を引かれたことが書いてあった。シチュエーションは忘れたが、どうもその有名作家は、ジャズが好きだったらしくO女史に生のバンドでジャズを歌ってくれと頼んだらしい。私も最近バンドやドラムに凝っているから、この部分に興味を持った。

次の封書は、石川県金沢市千日町3-22と住所が書かれていた。ブルーの封筒である。名のところには、室生犀星記念館とある。
開けてみると私の名宛てで、記念館館長U氏の名が書かれてあった。ほとんどがワープロで書かれている。
タイトルは『北陸新幹線開業記念企画展「犀星と田端文士村」展開催のご案内』とある。なるほど、このブログにも書いたが、先だって私はご依頼があって田端文士村で講演をしてきた。きっと私の名や住所を室生犀星記念館は、北区田端の文士村記念館から知ったのであろう。
開催期間は、平成27年7月4日(土)から11月8日(日)と記されていた。その下に館長Oさんであろう方のペンの文字で、「この度、展示で菊池寛様を少々紹介させて頂いております。よろしくお願い申し上げます。」と書いてある。
たまたまだが、20年以上前に各社の広告関係者とアメリカに研修旅行に行ったことがあったが、その後、ザリガニの会と称し毎年何回かその仲間たちと飲み会などをしている。ザリガニは、皆で立ち寄ったアメリカのニューオリンズのトレードマークで、その名を会の名前にしている。そのザリガニの会で今年の9月28日から一泊で金沢観光旅行が予定されていた。私も参加の返事を出していた。ちょうど良いが、団体旅行なので皆が興味を持つだろうか、また、ひとりで行くとなるとその時間があるだろうか。館長からのご案内状の他に催事のパンフレットも入っていた。表には、東京の田端の地図の上に芥川龍之介、吉田三郎、中野重治、堀辰雄、荻原朔太郎、菊池寛、室生犀星の名と顔のイラストが画かれている。裏面には、
「東京都北区田端はかつて、文士や芸術家が多く暮らしていた郊外のまちでした。彼らは互いに行き来して生活を謳歌し、さながら一つのコミュニティを形成しているようであったことから、後に『田端文士村(もしくは文士芸術家村)』と呼ばれるようになりました。おもに明治末期から昭和前期のころのことです。(中略)本展示では、田端時代における犀星の人生模様と、それを彩った交友関係を紹介します。現代と比べると人と人との距離がもっと近かった、当時の文壇の雰囲気も同時に感じていただければ幸いです。」と紹介されている。室生犀星記念館は、金沢駅東口から北陸鉄道バスで「片町」下車徒歩6分。9時半から17時まで、会期中は、無休と書かれてある。有料だが、安い!詳しく知りたい方は、076-245-1108に電話をされると良い。

もう1通は、高松市の菊池寛顕彰会からである。菊池寛顕彰会会員各位宛てで
会長からの「お知らせとお願い」と題して、「今年の文学展は8月29日から始まります。当日、9時30分からのオープニングセレモニーの後、3階会議室で菊池夏樹名誉館長を囲んで、『近頃の小説のことなど』につき10時30分からお話を伺う会を計画しております。貴重な機会であり、初めての試みですので、是非お大勢の方のご参加をお願いいたします。」
とあった。文学展は、高松市で毎年催されている。今年は「夏目漱石」がテーマである。毎年6月の終わりか7月におこなわれていたが、今年だけは、会場の都合があったらしい。当日市長と並んで、紅白のテープを白い手袋を嵌めてカットする。10分くらい喋って終わる。そのために私は、前日に高松に入る。
今回は、別に囲まれて話をするらしい。現役時代は、いろいろな新しい作家の小説を読んでいたが、最近は、好きな作家しか読まなくなった。出来るかな?