閉門即是深山 547
帝室御賞典
「とった!とった!3000円が3百万になった~!」
いつも屯(たむろ)する喫茶店に、いつもの老人仲間が入ってきた途端に、彼は大声で叫んだ!
どうも前日行われた競馬の話らしい!
1947年、昭和22年、私の生まれた翌年から天皇賞と改名された。それ以前、1937年、昭和12年に天皇賞と改名された帝室御賞典は秋の東京競馬場で始まった。
3000円が3百万円になったと聞いて、ちょっと私の心は羨んだが、その老人は、未だに大所帯で儲けが大きい企業の社長か会長なのだ。と、いうことは、底知れぬくらいに今まで競馬に注ぎ込んでいるはずだ。負けた時は、言わないからきっとトータルではビルが建つほどに注ぎ込んでいると思う。神様が、ほんのお返しをしてくれたのか?その人には、言えない話。はっきりとは、聞いていないが、天皇賞でこれだけの当たりを引いたのは、1着、2着、3着を確実に当てたからだろう!てぇしたもんだ!
私もコロナ前までは、東京競馬場に一年に1回ご招待を受けて遊びに行った。祖父の菊池寛が馬を50頭くらい持っていたから、JRAが招待してくれたのだろう!祖父の友人作家で『宮本武蔵』の著者吉川英治も競馬が好きで、右の懐に今日馬券を買う金を入れ、金が戻ると左の懐に入れて帰ったとモノの本で読んだ気がする。私も真似て、ご招待を受けた以上、その分は置いてこないといけないと思い、適当に遊んでいたが結局ほとんど元の金額が左のポケットに入っていた。とんとんで一日遊んだのだ。
祖父は「我が馬券哲学」を書いている。少し長いので、何回かブログを跨いで書く。
次に載せるのは、自分の馬券哲学である。数年前に書いたものだが、あまり読まれないと思うので再録することにした。
一、馬券は尚禅機の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て、念とすべし。
一、なるべく大なる配当を獲んとする穴買主義と、配当はともかく勝馬を当んとする本命主義と。
一、堅き本命を取り、不確かなる本命を避け、たしかなる穴を取る、これ名人の域なれども、容易に達しがたし。
一、穴場に三、四枚も札がかかると、もう買うのが嫌になる穴買主義者あり、これも亦馬券買いの邪道。
(次号につづく)