閉門即是深山 546
気がついてみれば!
習い事の月謝は、まっ、払えない金額ではない!
振り返ってみたら11年も続けてきた。月謝に12ヶ月を掛け算をして11年を掛けてみた。やっ、安い自動車なら買えたかも知れない!慌てて、計算機のACボタンを押して液晶に出た金額を消した。次のドラムレッスンでドラムの先生の個人授業は、卒業となる。この1ヶ月難しい譜面と対峙している。もちろん、素人向けの教室である。ドラム基礎編の先生は、有名なドラマーで五木ひろしの専属ドラマーを務めていた。ちょうど私の基礎編が終わるころに吉幾三さんに自分の専属にもなってくれと頼まれたらしい。後から知ったのだが、有名歌手が地方に行く時にビッグバンド全員を連れて行くのは金銭的にも楽では無い。そこで、現地で集めるらしいが、やはり指揮者がいる。それが専属ドラマーで、ひとりで行って現地のバンドの指揮者にもなる。歌手が選ぶので、誰でも良いとは言えない。信頼が厚く、名人上手でなければならない。そんな有名、優秀なドラマーだったとは知らずに、私は67歳の時に彼の門を叩いた。もう身体も思うように動かない身でなんと無謀なことをやったのか、無知とは中々良いものである。
次何やりたいの?と訊かれ、ドラムはアメリカで出来た物だからJAZZにしますと不用意に答えた。じゃぁ、この先生にしなさいと紹介を受け、試験を受けて習い始めたのが今の先生だった。年齢は不詳だが、私よりずっと若い。息子のような歳だろうか。70歳を過ぎている生徒をよくもまぁ引き受けてくれたものだ。途中コロナ休みがあったものの7年以上嫌な顔もせずに付き合ってくれた。
ドラムも奥が深い。いくらでも先生の懐から譜面が出てきそうだ!しかし、黙っていれば死ぬまで生徒をやらなければならない。技術は習うが、テンポや速さは教えられない!だから、生徒も自分の歳を考え、習った技術を曲に合わせて速く敲く練習をしなきゃならない!それには、3年はかかると思う。そこで、78歳の10月いっぱいで卒業するということになった。もちろん先生と相談したうえのことだった。私は、近々黙っていても手が震えるようになると考えた。でたらめに震え敲くのではなく、どうせなら勉強した敲き方で人を唸らせたい。今年、卒業歳が78歳だから、3年後の81歳で私のドラムが完成に近づければ御の字だと思っている。18歳から22歳まで見様見真似でドラムを敲いていたが、今度は大先生の基で技術を習得し3年も、その技術を磨いた“敲く”を披露出来るのだから、やる方もひけ目を感じなくていい。
そして、後1回のレッスンとなってしまった。5打敲く変形の3連符1小節、譜面ではアクセントのついた16音符1小節、また3連、そして16、難しい!最後の日によくやってこれましたね!と言われたいために、1歩1歩の階段を登るようなレッスンを続けて来たが、最後に訳も判らない譜面に挑戦し、崩れ去るとは思わなかった!残念!