閉門即是深山　５２３

ていへんだ！ていへんだ！

寒い日、金曜日だった！祖父の作品『恩讐の彼方に』を３月に名古屋と三島で公演をしてくれた原田大二郎さんから、ひと月前にLINEでメッセージが届いた。原田大二郎さんの朗読と、パーカッションの名手佐藤正治さんのコラボレーションで評判だったと聞いた。
原田さんからのLINEには、招待しますから４月の渋谷での講演に来ませんか？と書かれていてパンフレットの写真が載せられていた。

原田大二郎さんは、テレビ『Gメン７５』なので有名な俳優さんで、蜷川幸雄作品などに出演、最近では、夏目漱石や芥川龍之介、菊池寛や太宰治、宮沢賢治などの作品の朗読会を色々なミュージシャンと共にエンターテインメントとして各地で催していると聞いている。また、今回コラボされたパーカッションの佐藤正治さんは『井上陽水』『久石譲』『ビル・ラザウェル』等多くのアーティストと共演したり、作曲家としてのNHKスペシャル『大アマゾン最後の秘境』は有名である。またバンド『MASSA』や『ヒカシュー』で活躍している。

ふたりのコラボで祖父の作品『恩讐の彼方に』を聴けるなんて夢のよう、さっそく原田さんにLINEで「行く～ぅ！」と返事を書いた。その講演の開催が、突然寒くなった金曜日であったのだ。
場所は、渋谷。最近の渋谷は変わったと聞く！地下鉄で素通りしたり、乗り換えたりしたことはあるが、表には出ない。場所は、伝承ホールと書いてある。スマホに頼ったが、どこがどこやらまったく判らない。地図をよく見ると、さくら通りを登った処にあるらしい！

渋谷さくら通りは、この季節になるとテレビのニュースで、桜並木とその花見客の混雑ぶりでよく出てくる。が、どこにあるやもわからない！どうもこのあたりか？坂道は、寒いのに人が一杯！確かに桜の並木が美しかったような気がする。居酒屋の呼び込みも煩いが、何かぜいぜいした。呼び込みの声も、桜の華やかさも霞んできた。

ホールの受付には、奥方がいらした。挨拶をして席に座ると尿意をもよおす。トイレに行けば“始めチョロチョロ、中パッパ”状態だ。舞台が開くと尿意、チョロチョロも無し、席に着くとまた尿意！舞台の邪魔にならぬようにロビーの椅子で、漏れてくる声を聴くしかなかった。舞台が跳ねればロビーに原田さんが、お客様をお送りすると聞いていたから、勝手に帰るわけにもいかない！お礼と感想のひとつも言わなければ失礼だと思う。その間も出ないとわかっていてもトイレに駆け込む。尿意は、間断なくあるのだから辛い！心此処にあらずと挨拶を済ませて、エレベーターに飛び乗る！帰りのさくら坂の混み方に焦り、渋谷で無駄なトイレに駆け込み、他駅と意味のないトイレに入った！

夜の１０時過ぎ、我慢も限界に達しているが術もない。翌朝の土曜日有難くも、私の住いの近くにある泌尿科に飛び込んだ！原因は、調剤された花粉症の薬、カテーテルに繋がれた１週間は中々辛いものでしたよ！