閉門即是深山 487
SCRAP & BUILD
私は、現役のころよく仕事で欧州に行った。特に、スペインやイギリスは、8回以上旅をしたと思う。
ある時、イギリスのヒースロー空港に着きホテルでテレビをつけたら現国王、当時はチャールズ皇太子だったが、テームズ川を船に乗ってマイクを持って何か喋っていた。私は、英語力が無きに等しい。画面は、ロンドンの街並みを映している。ところどころ解る単語をつなげ想像をたくましくすると、どうもチャールズ皇太子は少々ご機嫌が斜めらしい。皇太子が指をさすビルをカメラが追うと、私が気が付くくらいに街並みとアンバランスなデザインの新しいビルが建っている。なるほど、単語をつなげて理解したように、こんな建物はロンドンに不釣り合いだと皇太子が嘆いているのが判る。
イギリスの旅本を見ると、私が憧れを持つほどに古い石造りばかりの写真が並んでいる。ピカデリーサーカスのロータリーも全て石造りの建物で囲まれ、赤い二階建てのバスやオースチン製のロンドンタクシーが映し出されている。地下鉄の出入り口、公衆電話、店の看板、新聞や雑誌を売るスタンド、パブの看板なども電飾でピカピカの日本風ではなく、板看板にライトが当たっているだけで多くは自然に調和した緑を地にしたものが多い。
私は、イギリスの町々村々を見てきたが、皇太子が怒るほど吐出して近代的な建物は見当たらなかった。しかし、古き良き時代に生きた英国人から見れば気持ちが悪いのかも知れない。そこには、老いた国があった。海洋の国イギリスは、船を用いて七つの海を航海し、後進国を領地にして投資をしてきた。スペインもオランダも自分の国に投資をし終わると他国に手を伸ばした。自分たち大国は、金を出すから貧乏な国は働けというわけで、体のいい奴隷と悪代官の関係を作った。素朴な資本主義である。アメリカなどは、広い大陸だから自らの地に資本を投下せねばならない。そのためか、戦略的な考えを覗けば他の国を乗っ取って領地にしなくてもよかったのだろう。
共産主義や社会主義のイデオロギーは、理にかなっている。みんなで頑張って働いて分け合おうね!実にいいじゃない?ところが、人間はそうはいかない強欲というものがある。理想はよくても、いざやってみるとヒエラルキーが出来上がる。率いるトップの連中が頂点に立ち、民衆を奴隷化するわけだ。結果、強欲がはびこる。現在のロシアや中国を見れば判る。ヒエラルキーとは、似て非なるものにカースト制度がある。インドに代表されるが、やはり上下関係が生まれる。何を主義というか、私には判らないが人間の持つ強欲が、理想的世界を壊していく。
アフリカを除けば、世界が同じ中流になってきた。私は、タイに40回くらい旅をしたが、子供たちは裸足からタイヤを加工した草履、ビーチサンダルからナイキの靴に変わっていった。最近では、日本への旅行者の中にタイ語が混じっているのには驚くし、微笑ましくも思う。ことは深刻になってきた。資本を投下する場所が無くなってきたのだ。それは、資本主義の終焉を意味する。いや待てよ!壊せばいいのだ、壊すのに一番手っ取り早いのは、戦争である。壊して、造れば、一部の人間は儲かるわけだから!