読書随處浄土 | honya.jp

『閉門即是深山』1

読書随處浄土

医療の周辺を電子ブックに載せて読者にお届けしようと思って健康電子ブック『ジレ!』を創ってみた。

私のブログでは、健康問題ばかりでなくその週で面白く感じたいろいろな出来事も書いてみたいと思っている。

「ブログのタイトルはどうしますか?」

私が100本近く文藝電子雑誌『アレ!』のために書いてきたブログのパートナーだったT某が、私に訊いてきた。

実は『アレ!』は、多くの企業のバックアップを得て2年間という限定の中、電子メディアで大きな実験をしてきたのだが、今年の春、契約が切れて休眠させた。そのときも私は『アレ!』の宣伝の意味合いもかねてブログを書き続けてきた。それが100本近くになったのだ。読者に評判が良かったようだが、終盤、T某が奇病で倒れ入院してしまった。私は、原稿を書くことはできても、ブログに載せることができない。そのために、ブログも終わりのご挨拶無しで頓挫してしまった。

文藝の電子雑誌『アレ!』のブログを読んで頂いた読者はご承知だと思うが、T某は、少々間抜けなところがある。背は高く、顔は、日本橋の欄干脇の麒麟に似ている。そう、東野圭吾氏の作品で、映画にもなった『麒麟の翼』のあのキリンの顔に似ているのだ。

仕事を共にしている人たちは、T某は、社で働く友國君か?と私に訊く。断じてそれは違う。T某は、T某であって、友國君ではな~ぃ!そう言えば、友國君も春先に病で倒れ、入院したっけ!でも友國君では、断じてな~ぃ!

その友、いやT某が、ブログのタイトルを付けよという。いい加減な私は、タイトルなんてどうでもよかった。付けよ!どうでもいい。付けよ!どうでもいいじゃないか。つけ…

「閉門即是深山で、どや?」

「なんだ、それ?」

「漢詩でな!」「あんた漢詩なんて知ってるの?」「知らない!」「なら、インチキ?」「そうでもない」「インチキだろ?」「ばか言え!T某!おれの爺様の菊池寛という往年の作家がな、この言葉が好きでよく色紙に書いていたんだ!」「ダレ、それ!」「ほらT某だって『父帰る』や『恩讐の彼方に』くらい知っているだろ?

あの作者だよ!文藝春秋を作ったりさぁ、この間、藤野可織さんの『爪と目』が芥川賞をとっただろ?桜井紫乃さんが『ホテルローヤル』で直木賞を受賞したじゃないか、あの両賞を設立したのが、き・く・ち・か」

「あの『ホテルローヤル』という本、ほんまいやらしかったどすなぁ!北海道の連れ込み宿の話しどっしゃろ?客の使ったシーツを嗅いだりして」

「T某!お前ナニびとなんだよ!」「それで、閉門とやらを?」

「閉門即是深山の後にな、読書随處浄土と繋がるんだよ」

「へ~ぇ、漢字ばかりどすなぁ、おまっしゃろ?」

「ドアを閉めると、すぐにそこは深い山と同じになる。読書は、いつでもどこでも極楽浄土にしてくれるものだ!きっとこんな意味だ!」

「へ~ぇ!学がありまんがなぁ、学がある人は、あまり他人に見せしまへんけどなぁ!能ある鷹は、爪か目を隠すって」

と、いうわけでこれからの私のブログのタイトルが『閉門即是深山』ときまりました。「読書随處浄土」は、読者がどんなタブレットで、どこで読まれるか?

力のない私が、浄土にできるでしょうかね?

「そりゃ、無理おます!」

T某の悪態で、血圧が上がってしまった。

せっかく、アムロジピンという薬で120ちょっとに抑えている血圧症が、以前の180に戻ってしまった気がした。

 

『ジレ!』発行人 菊池夏樹