気になる3つ | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 433

気になる3つ

私は、テレビでは報道番組やニュース番組を観ている。早く家に帰れば、Nスタ等の夕方のニュース番組は観られるが、まぁ、よっぽどでなければ夜のニュース番組は、見逃さないようにしている。まずは、夜9時から始まるNHKのニュースウォッチ9、終わるとテレビ朝日の報道ステーションに切り替える。そして、日本テレビのNews ZEROである。ちょっと前までは、コロナのニュースで持ち切りだったが、ロシアのウクライナ侵攻でコロナは、二番目のニュースとなった。そして、北海道の知床岬で起きた観光船転覆事故が発生した。私の事故の大きさや興味は、ウクライナvsロシアの戦争のほうが大きいので、一番先に十分に時間をとってやって欲しいが、ロシアのウクライナ侵攻戦争は、二番目に落ちた。

私は、若い時に小型船舶操縦士の免許を取得した。雑誌作りで忙しい最中、部長に頼んで2週間6時に仕事を終えさせてもらって、青山にあった教習所に通ったのだ。もちろん、部長は不審に思ったらしく何故に早めに社を出なければならないかを聞いてきた。良き時代でもあったし、年に2度も昇給する時代でもあった。入社時の部長クラスの給料を『あっ!』という間に超えた時代でもあった。
私は、もともと船乗りになろうと思ったわけではない。あまりにも、世の中が無秩序になり給料がどんどんと上がることを考えると、恐ろしくなったのだ。私の入社した出版社は、人気があった。入社の希望者も多く1000人は、超していただろう。その中で入社できるのが6、7名だった。そんな時代だった。その頃のことを後からバブル時代と名前が付けられた。恐ろしさのあまり倒産するのじゃないかと思った。もし、倒産したら2人の幼子をどうやって食わせられるのか、心配になった。
世の中、いろいろな資格がある。何故、船長の資格を取ろうとしたかは、わからない。きっと芦ノ湖か山中湖で観光用プレジャーボートの操船ならば出来るような気がしたのだろう。部長に答えた。「もしウチが倒産したらと思って」粋な部長は、2週間だけという条件で許可してくれた。

1級の小型船舶の国際免許取得は、難しい!3科目、座学で操船技術、法令、機関とあり、土日は、羽田沖で実地訓練があった。座学の講義も夜7時から11時くらいまであったような気がする。3種目とも毎日試験がある。前回の講義からの試験で80点以上取らねば、その場で落とされ退場となる。救いは、無い!出席に及ばず、であった。大きな教室で、毎日人が減っていく。気象図の読み方、日本特有の海流、海図見方の試験、危険に遭遇した時のアンカーの使い方、アンカーは錨のことだが、パラシュート状のアンカー。嵐に遭遇した時に船首を波に向けアンカーを船尾から海中に降ろす。海中のパラシュトアンカーは、船を流さないためのものなのだ!

海技免許の特徴は、自分ひとりで死ぬのは勝手だが、誰かを乗せて遭難したら殺人になるぞ!というものなのだ。テレビのニュースで観光船の会社の社長が土下座をしている。質問する記者も不勉強な質問だらけだが、社長は船舶のことを何も知らないようであった。社長さんよ、会社を買うならば、海技免許くらいはね!