怒髪天を衝く!| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 381

怒髪天を衝く!

あぁ~あ!コロナは、収まる気配さえ無い!4月中旬には、大阪が東京を抜き感染者が1000人を超えた!そして、予防接種が日本国民にゆき渡るのがいつになるのかも想像すらつかない。

政府は、ワクチンを拾い集めるために国務大臣の席まで設けているのに、何ら手ごたえがない。河野担当大臣や厚労省の大臣まで苦しそうな顔つきになっている。そして、最後には、夜マスクを外して飲食を貪る国民のせいにしている。

ほら、ゴールデンウイークは家にいなさいってあれほど言ったじゃないか!全て悪いのは、言うことを利かない国民のせいだよ!

確かに日本人は、昔のように“右へならい!”が出来なくなった。しかし、教育方針がそうさせたのだ。個性に於いて諸大国に負けていたからだ!シコシコと夜なべ仕事をすることも無くなった!働く時間が減って、給料が高くなったら、仕事は、安い賃金の国へ行く!

昭和戦前の日本人は、我慢強く、物を欲しがらなかった。エルメスというバッグのメーカーやロレックス、ヴィトンやカルチェ、アルマーニなども知らなかった。知っていても自分とは、関係の無い物として思っていた。

以前、これら商品の総元締めロスマンズ・グループのCOに訊ねられたことがある。多分嫌味として訊いてきたのだろうが「あなたの国の若い女性たちは、皆貴族の娘か?」通訳が私に言った。

諸大国の人達が日本人をそう見ていたのだろう。若い娘は、肩からヴィトンを提げ、若い男どもは、ヴォッテガの財布を持つ。パリでも、ロンドンの人も、もっと質素なのに!

今、あの大国に名を連ねた日本は、どこに消えてしまったのだろうか?新種の細菌がいつか発生するか、時は判らなくとも想像くらいついただろうに!ワクチンさえもアメリカに頼っている。

菅総理が、手揉みしてアメリカに「少しでもいいんです、日本にワクチンをめぐんでくだせい、お代官さま!」「せっかく来たんだから、このくらいめぐんでやろう!そのかわり今後は俺さまたちの言うことを何でも利くんだぞ!」「へい、ありがとうござりやす!今後、アメリカ様に足を向けて寝るなんざ、いっさいいたしやせん」

それも総理大臣が民間会社に懇願したのだ。それも票のために!なんともはや、情けねえ話でござんす!プライドも何もあったもんじゃござんせん!アジアのはずれの小さな島国に戻ったんでござんすよ!

日本国憲法で国民の生存権を述べている第25条2項には「国は、国民の公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。9月いっぱいに、16歳以上のワクチンが揃うから「安心せよ!」と情けない、自信の無いコメントを菅さんが小さな声で言う。

裏では、自民党幹部が「そりゃ無理だね、老人用ワクチンだって来年の春になるかも知れないもの」と大声で叫ぶ!もう誰も「狼が来たぞ~!」なんて信じていない。

祖父・菊池寛が書き残してくれた『マスク』(文春文庫刊)が手元にある。一世紀前にスペイン風邪が流行った世界では、この流行で五千万人から一億人命を落としたという。その中では、国民は、マスク・手洗い・ウガイ・家籠りをしたという。

この感冒は、約3年で終息したらしい。百年で医療は、随分と進化したはずだ。医療が進化しても、百年前と同じなのは、政治それとも官僚組織?