菊池寛の短編朗読| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 379

菊池寛の短編朗読

先日、私が加入している健康保険組合から検診のお知らせが届いた。よくよく読んでみると「誕生日までに検診を済ませてください!」と書いてある。今までに無かった文言である。

その時にやっと気がついた。75歳の誕生日、後期高齢者の入り口、いつだったか多くの健康組合が投資に敗れ身動きがとれなくなった時があったが、その時に国は後期高齢者を全て国民健康保険に移すことを決めたのを何となく思い出した。

私は、就職してからずっと出版健康組合の組合員として今まで続けてきた。が、否応なしにこの誕生日から保険が変わる。私本人は、出版健保が変更の手続きをしてくれるそうだが、家人は区役所に行き自分で申し込みをせねばならないシステムらしい。

家人の年齢は、私より少し若いが、家人も私の誕生日で国民健康保険に変わらねばならないのを始めて知った。なかなか面倒なシステムだ。昨日、その様子を訊きに区役所のセンターの相談窓口に行った。

マスクをつけていたからか私の言っていることが不明瞭なのか、何度も担当者から訊き返された。就職してからこれまで健康保険のために区役所を訪ねたことがない。何て良いのか言葉が出なかった。「それで、あなたが後期高齢者になるんですね」「はい!」「で、企業の組合に現在入られているんですね」

カウンター・テーブルの上には、最初から私が現在使用している健康保険カードを置いてある。私は心の中で「最初から見せてるじゃん!お役所仕事め!」と思いながら、笑顔を装った。

「それじゃ、あなたの誕生日月に保険組合からお知らせが届きますよ」面倒くさそうに、目の前にいる初老の男が言う!たぶん「わからん老人だ、早く帰れ!」と、言いたそうに。「そ、そうじゃないんです!私の家人のことです」「それを速く言ってくださいね」私は、一番最初に言ったはずだよと心の中で抑えて、笑顔を見せた。

「お誕生日は?」と訊かれ「カードを見せながら、私の誕生日を言った。「いえ、あなたのではなく、扶養されてる方のです」家人の誕生日を言うと「まず、とりあえずお宅の誕生日でおふたりの入ってらっしゃる組合の保険の効力は無くなりますから、失効証明票をもらって、また来てくださいな、とりあえず失効してから14日以内にですよ!そして、その方のお誕生日に、もう一度来て頂いて、その方の後期高齢者健康保険の手続きをしなければ」

「本人に来させればいいのですね?」「いえ、いえ、あなたが来てもいいのですよ、免許証でも持って」おいおいこんなにヤヤコシイ手続きを踏んで、最後は、それかい!

役所は、昔も今も変わらない!帰り道に携帯が鳴った。もしかして、私の声は、不機嫌だったかも知れない。「もしもし、私NHK京都の〇〇と申します」中年の男性の声だ!電話では、コロナは感染しないだろう。

「高松の菊池寛記念館の者から聞いております」「そりゃよかった!今、京都で第70期将棋名人戦が森内名人と羽生善治二冠との間で行われてます。第11期の大山康晴さんと羽生さんは、将棋界でおふたりだけ菊池寛賞を受賞されてます。菊池寛の将棋にまつわる短編を5月の最初のラジオ深夜便で朗読したいのですが」どうぞ、どうぞ、と言う私の笑顔は、どうも嘘っぽい!