オリンピック・パラリンピック、イヤー | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 317

オリンピック・パラリンピック、イヤー

前の東京オリンピックは、確か私が高校生時代だったと思う!
首都高速が出来て、江戸のシンボル日本橋の橋が消え、東洋のベニスと言われた運河が埋め立てられ、神田川などにいた水上生活者が新しい団地に詰めこめられ、アジアのシンボル屋台まで不潔とされ消えた。東京は、一変してミニチュアのアメリカと化したのだ。全ては、役人や政治家が結託し国民に都民に「ほりゃぁ! 近代的をお前たちに、こんなにしてやってやったぞ!」なんて、望んでもいないことを勝手気ままに、金の使い放題をやったものだった。

確かに、神田川を含め東京の河川は、メタンの泡が出るほど汚かったが、それも国の味だった。今、タイのバンコクに行くと、あのころの東京の川がある。臭い、汚いはあるが、バンコクの風土に馴染み、なかなか良いものだ。綺麗で、作り物で、良いモノは、アメリカで充分だし、アメリカの都心からちょっと外れれば、アメリカも、もっと汚い。テレビで最近よく観る番組は、空港で外人を捕まえインタビューしたり、日本の文化に取りつかれた外国人を日本によんで、包丁や盆栽の日本の本物の作り方を教える番組等が多いが、そうなのだ!日本をわざわざ変えなくてもいいのだよ!と思う。

話題が脱線するが、私がドラムを習う先生が、ある時、譜面を指さし「これを敲いてみてくださいな!」と言った。基礎編の真ん中あたりに出てきた譜面だった。やや難しい部類に入る。譜面を見た私は、なんでこんな簡単なリズムが、難しい部類に入っているのか訝しく思いながら敲いた。先生は「ねっ!貴方くらいのお歳の方には、これ優しいんですよ。いつもこれを敲いていらっしゃったでしょ?でも、今の人には難しいんですね!敲けない人が結構沢山いますから」。
そう、昔を捨てると、それを新しく造ろうとしても、なかなか出来ない!伝達されていないから、昔に出来たのに今の人が出来なくなってしまう。

私は、今話題の豊洲に住んでいる。築地市場が移転してきたが、味も素っけもない。やはり、人間は、オモチャをひっくり返した処が好きなのだ!店で言えば、ドンキホーテや百均等で、どこに何があるか判らないけど、統一感の無い処の方が居心地がいいのかも知れない。豊洲は、高いビルやマンションが建ち並び、私が越してきた頃とは大違いになってしまった。あんなに大きな空があったのに!夕方の黒富士が見えたのに!汐の香がしたのに!便利になった!が、失うものが多すぎた。
鬼の平蔵が火付盗賊改方の長官を退任した後、月島や豊洲あたりの築地を開拓するため、軽犯罪者や下級武士の次男、三男を集めてその任にあたった。人足寄場の長官・長谷川平蔵の見た夢は、こんな江戸前だったのだろうか?便利は有難いが、人を怠惰にしてしまっているのではないかなぁ!スマホを見ながら歩いている人が多いし!スマホを見ながら、猛スピードで自転車を走らす人も多いもの。あ~ぁっ!