閉門即是深山 277
家康、江戸を建てる
タイトルは、『銀河鉄道の父』で第158回の直木賞を授賞した門井慶喜氏の本の題名である。
平成28年2月に祥伝社から単行本で出版され、昨年11月に同社から文庫本となった。てんで面白い本である。今年の正月、2夜NHK正月時代劇としてテレビドラマ化されたので、映像として観られた方も多いだろうが、やはり原作本をお薦めしたい。
帯には『本書は壮大な荒野を開拓し、大都市・江戸を作った家康と、その家臣たちと、地元の職人たちの活動を描いている。利根川の流れを大きく曲げ、金貨を鋳造し、飲み水を引き、江戸城の石垣を積み、天主閣を建てる。その一つ一つに男たちは文字通り命を賭ける。
他の人々にも共通することだが、カネではない。名誉でもない。男たちはやりがいを求めて、おのが仕事にプライドをもって「江戸」を、現在の東京を「建てた」のだ(解説より抜粋)。』とある。
この解説は、東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏が書かれたもので、本文の章「第一話 流れを変える」「第二話 金貨を延べる」「第三話 飲み水を引く」「第四話 石垣を積む」「第五話 天守を起こす」を盛り込んで読者が飛びつくように書かれている。
私は、一昨年まで、年間150冊くらい本を読んできた。しかし、最近は、眼も悪くなり、根気もやや衰えて、この本の存在を知らなかった。教えてくれたのは、私がドラムの練習に行く前に立ち寄るコーヒー店の喫煙室に集まる年寄り仲間のひとりだった。爺さん4人、時々婆さんひとり。女性を婆さんと呼んではいけないならば「おばさん」ひとりである。
敢えて待ち合わせをしているわけではない。ひとりは、土曜、日曜、祭日は、孫たちが家に来るから、来ない。一番の老人は、ちょいと前に愛妻を亡くし「だまってりゃ、何日も人と話せねぇ」と雨、雪以外は、来る。坊主頭で私にこの本の存在を教えてくれた、爺たちの中では一番若そうな爺は、本を読みに時々来るが皆が帰るまでは、本を開かない。さぞ、早く読みたいのだろうが、何を言われるか判らないのでしぶしぶ閉じた本を脇に置き皆の話の中に入る。おばさんは、多くて月に1度会う。そのビルの地下にあるマーケットのポイント何倍デーにおばさんは、ガラガラを曳いてやってくる。
話は、日曜の競馬の話、釣りの話、旅行に行く話、銭湯仲間と公園で缶チューハイを飲み過ぎた話、取り留めもなく話し続ける。面白い。私は、出来るだけ聴き役にまわる。
偶然だが、私に本の名を教えてくれた人を含め、ついでに私を含め、3人が同じ名字である。話は、戦後何年か経った東京、特に江戸川橋付近、神田浄水、皇居の公園、田端や大塚、矢来や飯田橋、水戸様の後楽園付近と話は、尽きない。時々、「えェ~と、えぇと、何処だっけな」ひとりの爺が言うと、ひとりがスマホを取りだし検索をしている。
近ごろの爺は、若い!