閉門即是深山 272
いろいろ話
さて、ブログでも書こうとして私のノートパソコンを見たら、閉じている蓋の上に一冊の本が置かれていた。赤坂のオフィスでのことである。
このところ所属している日本ペンクラブも忙しく、また教えてもらっているドラムの技術も難しくて練習に追われて、ブログを書くのが遅くなってしまった。何を書こうか、と思うとき、私は近くの喫茶店に行く。電子タバコを吸いながら、コーヒーを飲みながら、喫茶店で知り合った仲間と話ながら、何か書くことを頭の中で探すのだ。そんなとき私が寡黙になる。と、周りが静かになる。なにか思いついたな、と承知してくれるからありがたい。頭の中で構成をしていく。これで書けるぞ!思うと上の空で、店を出てオフィスのパソコンの前に座る。そうしたところ、本が置いてあった。
それは、私もよく知っている京大名誉教授森谷敏夫先生の近著であった。表紙には『自律神経を知ってますか?~自律神経とは鍛えるものです』とある(※)。帯には「働き盛りのあなた必見!」に続き「気がつくと顔が赤くなっている… 心臓がバクバクしてる… これって、もしかして… 自律神経のせい?!」と大きく書かれている。
どうもこの本は、女医の「マダムS」が患者のハッさんクマさん達に厳しい診断をくだす16の小噺で構成されているが、健康寿命の延伸に役立ちそうだ。最近の病のほとんどが自律神経の影響を受けているらしいから、面白そうだと読み出してしまった。そして、書こうとしていたことを全て忘れてしまった。
先月21日に第160回芥川龍之介賞・直木三十五賞の受賞式が帝国ホテルの孔雀の間であった。1000人近くのお客で混んでいた。ニュースでもやっていたから多くの読者は知っているだろうが、芥川賞は新潮新人賞、三島由紀夫賞を受賞された上田岳弘氏の『ニムロッド』(群像12月号)と町屋良平氏の『1R1分34秒』(新潮11月号)ボクシングの話である。直木賞は、ダ・ヴィンチ文学賞大賞でデビューし、日本ホラー大賞、第9回山田風太郎賞を受賞した真藤順丈氏の『宝島』(講談社)に決まった。
芥川賞・直木賞が終わると、2月の末に香川菊池寛賞がある。これは、地方の文学新人賞と思って頂きたい。ただ、祖父の名前を冠している以上は、出席しなければならない。受賞の祝辞は私も述べる。文藝春秋からの記念品も私が手渡す。終わって、高松市中央公園まで歩き菊池寛の銅像の前で献花式、集合記念写真、また市の庁舎に戻って受賞者を囲み懇親食事会。朝から夕まで息つく暇がない。
全てが終わって高松からマリンライナーで岡山に出た。新幹線に乗るためである。マリンライナーから降りて、エレベーターに並んでいたら、反対側ホームに停まっていた愛媛行きの特急の一番前の席に見知った顔があった。昔からの長い付き合いの小学館の編集者で、ペンクラブで共に活動している有志である。真に偶然!小説だったら「こんな偶然、あるかい!」と言っていた処だ。