また高松に行って!| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 261

また高松に行って!

先週に続き、また高松行きです。高松市菊池寛記念館で11月20日から12月26日まで開催されている「菊池寛生誕130年・没後70年」文学展のオープニングセレモニーに出席するためでした。

セレモニーは、朝9時ころから始まります。新幹線で東京から岡山に、マリンライナーで岡山から高松へ約5時間かかるので、地上で行くのは無理です。高松空港から会場の菊池寛記念館には、バスでおよそ1時間、車でも30分以上かかるし、飛行機は東京高松間が1時間10分ですから、何かあると遅れてしまいます。その日の予定は、何もなかったのですが前泊するしかありませんでした。羽田15時45分発のJALは、東京の空から高松までの厚い雲の上を飛んで行きました。東京から西の全体が切れ間の無い雲の上なんてことは、今まで一度もありませんでした。

空港に館長が公用車で迎えに来てくれました。実は、翌日のオープニングセレモニーの後、11時からの1時間私が講演することになっていました。もちろん、いつものように何も考えていません。館長に高松駅前の常宿に送って頂いてフロントでチェックインをしていた時です。シュチュエーションは、先週とまったく同じです。拉致です、車に押し込まれ、何処へやら、さらわれたのです。

路は、祖父の名が付く菊池寛通り、確かに車の窓から祖父の立像が見えます。中央公園です。歩道には『父帰る』や『恩讐の彼方に』の大きなレリーフが見えました。しかし、そこを過ぎると自分がどこに居るやら、どこに連れ去られるやら、何をされるやら判らないのです。車がキイィと急停車しました。歩道には、体格のいい男達が三人煙草を吸いつつたむろっています。車のブレーキで気が付いたのでしょうか。全員が車に向かって最敬礼をしています。怖いです。何をされるのでしょうか?私は、何も判らないのです。ホテルから急に拉致されたのです。今度は、目隠しも手や足をガムテープで縛られることもありませんでした。拉致男に背を押され、怪しげな3人に囲まれ、店へ入れられました。フランス料理店です。読者は「ゴッドファーザー」という映画を見られましたか?店内では、テーブルを囲み怖そうな男たちが私を待ちかまえていました。あの映画の出だしの部分と同じです。私の手は、冷や汗でびっしょりです、背にも汗がツーっと流れます。

ひとりの男が「やっと来たな、俺たちを3年も待たせやがって」と言います。座らせられた私の右には、会長と呼ばれる男がいます。私の前には、元会長です。その隣には、元検事で今は弁護士という若い男。敏腕な弁護士。この会で何があっても元会長や現会長を守り抜くゾ、という強い意志が見え隠れします。ひとりが立ち上がりました。手にはマイク「えぇ、それでは高松〇〇会を始めます」〇〇には、私の出た大学の名が入っていました。