閉門即是深山 248
江戸湾
私の住まいは、東京湾の海辺にあります。
窓を開けて覗くと右の方角に佃島・月島が見えるのです。遠くにスカイツリーが見える時もあります。同じ方角ですが、東京駅八重洲口のふたつのタワービルも見えます。バスでも20分くらいの距離です。目を左の方に移していくと銀座の光が見え、正面のやや右奥に東京タワーが見えます。たぶんあの手前あたりが、築地でしょう。その方向に聖路加タワーが見えるからです。
海辺に出れば、晴れた日には、富士の山が映し出されます。夕暮れ時の黒富士が見えた時など、そのラッキーさに溜息が出てしまいます。窓から富士が見えないのは、対岸に3棟のタワーマンションが出来たからです。タワーマンションの先で、今工事が進められている所にオリンピックの選手村が出来る予定です。観ていると、赤や白に塗った恐竜の首のようなクレーンが動きまわり、毎日建物が変化しているのを楽しめます。その場所に晴海ふ頭があります。今は、中止していますが引っ越した頃は、東京湾の花火が観れました。こんど再開しても、マンション群で覆われ、観れる場所を探さなければならないでしょう。
橋が見えます。これも引っ越しをした時は、レインボーブリッジが直接見えたのですが、今じゃ手前に何本も橋が出来たので、光輝く虹の橋の全貌を観ることが出来なくなりました。虹の向こうの光は、品川や高輪でしょうね。いくつかのふ頭もあります。もうちょっと左を見ると、何分かの間隔で飛行機が離陸、発着を繰り返しています。羽田空港です。羽田には、20分で行けます。左手前が、お台場で大きな観覧車とフジテレビのデカイ建物が見えます。観覧車の下方に、にょろにょろと蛇のように動く光が見えます。「ゆりかもめ」という無人のモノレールです。「ゆりかもめ」が縫うようにして走る建物は、今真っ暗です。10月11日を過ぎると、きっと一斉に煌々と光が灯ることだろうと思います。築地市場を後にした人たちが働く豊洲新市場が動きだすからです。
ここは、人工的な街です。路は広く、歩道など路側と歩道の中央に立ち樹が並ぶ広さです。電信柱が一本もありませんし、一軒家もありません。5~60階もあろうマンションとビジネスビルが整然と並んでいます。北側の橋を渡ればすぐに深川に出ます。江戸時代の庶民の町です。深川をもっと北に進めば昔の吉原に出ます。振袖火事で今の日本堤に移る前の遊廊のあった場所です。東北の橋を渡れば辰巳に出ます。やはり江戸時代に遊女のいた青線地帯です。眼下に黒い運河が見えます。現在は、隅田川が東京湾に流れ着く河口です。江戸時代の大川が江戸前に繋がる河口は、もっと上流だったと聞きました。黒の運河、東京湾には、提灯舟が行きかいます。そこには、自然もありました。満ち潮の時は、流れが左から右へ、干潮時には、流れが反対に右から左に変わるのです。鵜や白鷺、かもめたちを載せて。