閉門即是深山 238
ハラスメント
日本大学のアメリカン・フットボールの事件では、内田監督が辞任した。しかし、この問題について担当である田中理事長は的を得たコメントを出していない。
元中京女子大で現至学館大学でも、レスリングの伊調馨選手をめぐって同様な事件が起きた。栄和人レスリング前監督が伊調選手への練習場の使用阻止やコーチへの接触をさせないように謀ったのだ。それがニュースになり世論が騒がしくなった頃に、至学館の学長で理事長でもある谷岡邦子は、
「パワーのない人間によるパワハラっていうものが一体どういうものか私にはわかりません」
と、トンチンカンなコメントを発表した。
日大アメリカン・フットボール事件も至学館レスリング事件もパワーハラスメントが事件の素になっている。
1900年台の広辞苑で「ハラスメント」を引くと、出てこない。同じ時代の小学館『ポケット・プログレッシブ英和・和英辞典』には、書かれていた。まずharassとは「繰り返し攻撃する」「しつこく悩ます」と出てくる。また、harassmentは「悩み(の種)」とある。現代の日本語では「嫌がらせ。いじめ。」の意も含まれていよう。とにかく「他人に嫌がらせやいじめ、不快感、悩みを持たせては、いけないのである」
当たり前の事だが、ふたつの大学の理事長や学長が知らないのだから、けっこう一般にも知られていないのかも知れない。
「職場のセクハラ」とは、男女雇用均等法に基づく厚生労働省の指針では
「職場において労働者の意に反する性的な言動が行なわれ、
・それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること
・職場の環境が不快なものとなったため、労働者が就業する上で見過ごすことができない程度の支障が生じること」
としている。
また、「職場のパワハラ」に関して厚生労働省は、
・同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
とある。
先の例で言えば、知識人のはずの谷岡学長が「栄監督は、パワーのない人間だから」と言ったのは、パワーの意味を履き違えたのかも知れないと疑ってみたくもなる。しかし、考え方によっては、これ皆マナーではなかろうか?マナーは、法にするものでは無くて人間の優しい心なのだと思うけど……。