閉門即是深山 198
熊本の被災
彼女は、私が編集部に所属していた時によく一緒に仕事をしていた。
同じ出版社に勤務していても同じ部署で出会うことは少ない。しかし、彼女とは、よく職場が一緒になった。彼女は、私より少し若い。ある編集部で私が編集局長をしていた時、彼女が編集長で配属された。そんな気心の知れた彼女は、退職後に兄弟と一緒に入谷に喫茶店を開いた。話によると猫喫茶だという。屋根も入り口も猫の置物で飾られ、室内には本物の猫が沢山いるらしい。もともと彼女は、猫好きで『猫の手』や『猫の額』とか題を付けて、猫の肉球だけの写真集を好んで編集していた。こんなにも猫好き居るんだ、と私が思うほどにそれらの写真集はよく売れた。この店がちょくちょくテレビで紹介されていたのは知っていた。その後、入谷周辺が猫の街となっていったのだ。
今年の五月にコピーされた彼女からの手紙が私のもとに届いた。
「ご無沙汰しておりますが、」からその手紙は始まっていた。内容を読むと、昨年3月に50年暮らした東京を離れ、ふる里の熊本県八代市に戻ったと言う。
ところが、引っ越しした直後の4月14日、16日と立て続けにあの大地震が、あった。被害は甚大で、一時は奈落の底に突き落とされたような心地だったと綴られている。一年後の今でも全域にわたるような揺れがある。被害は、阿蘇周辺ばかりでなく、県南にある八代市も同様であるらしい。周囲の高齢者の憔悴ぶりには言葉もない。
しかし、最近では復興に向かって、各地域での住民活動も活発になっていると手紙は続いている。我が町の「坂本町住民自治協議会」では、神奈川県青葉区のボランティアグループの助力を得て、復興チャリティイベント「八代市さかもと国際児童画展」を開催することになりました。とある。
「どうぞ、お力を貸してください。そしてご家族や友人のお子様方、また海外にいらっしゃる方があれば、ぜひその国のお子様にも呼びかけてください。皆様のご参加を心よりお待ちしています。」と手紙は、締めくくられていた。
もう1枚、印刷されたパンフレットが同封されていた。この国際児童画展の詳細が書かれているパンフである。
ホームページ http://sakamoto-town.wixsite.com/silver でも判るらしい!
「さかもと国際児童画展」PDF
http://docs.wixstatic.com/ugd/c57e0b_8608067954914d6aa682fa5131b1b43c.pdf