閉門即是深山 102
Neo
また新しいバンドを組んだ。
新しいとは書いたが、50年前に結成して4年間活動し、皆仕事を持つために解散を余儀なくしたグループだった。バンド名をThe XL-4とつけた。当時は、バンド名に「THE」を付けることが流行りだった。この名前は、高校時代に我が母校の音楽サークルのJazzのバンド名だった。これをこっそり頂戴して大学のときにグループを組んで付けた名前だった。その後、キーボードを入れて「The XL-5」にした。当時のメンバーは、現在2人が死に3人になってしまった。
解散した後も、やれメンバーの結婚式だの娘の結婚式に「パパたちの青春時代を私たちの晴れ舞台でやってよ!」と頼まれて「もう出来ないよ!」とか「嫌だよ!」とも言えず何日か練習に集まった。
そして、残ったメンバーもあと一歩で70歳を迎える歳となってしまった。
あと何年できるかねぇ!ドラムと違ってリードギターもベースも指が動かなくなったら出来なくなるからねぇ!3人で集まったとき、そんな話が出た。私は、少々ムカついた。お前たちは、指かも知れないが俺なんか全身だゾ!ドラムなんだからな!
確かに、あと何年出来るか判らない!何年生きているか判らない!こうして同じ顔ぶれで何年やっていけるか判らない!
しかし、リードギターとベースとドラムだけではサマにならぬ。
グループだったころのキーボードを口説いたのだが「俺もやりたいんだよ、やりたいのさ、でもね、練習のために駅に行くことにも自信がないんだよ」と何度も言われた。
彼は、普通より早く引退をして父親の介護をしていた。父親が絶対に病院で死にたくはない、家で死にたい!と、我を通したから、彼は父親の想いを現実にしてやると決心をした。優等生の息子を演じた。まさしく、世に言う「老老介護」である。「演じた」と書けば、何か胡散臭い言葉に聞こえるが、彼は、真面目な男だから「本心」で介護をしたに違いない。その間、私は馬鹿な真似は止せ!病院に入れろ!お前やお前の家族が参ってしまう!オヤジの我儘なぞ聴くな!などと言い続けた。が、決めるのは本人である。
彼は、何年か介護を続けた。そして、父親が亡くなった後、どうも心もボロボロになってしまったようだ。
彼は、介護のころは、住み慣れた後楽園の近くに居た。父親が亡くなって、すぐに八王子に居を構えた。仕事は、ネットでやれるものに変えたらしい。
そして、あまり仲間の集まる時に、場所に、来なくなってしまった。
私は、彼をバンドのメンバーに誘い口説くのに3ヶ月かけた。
「なぁ、練習スタジオだって八王子の近くにしたっていいんだぞ。来れないときは、来なくっていい。皆に悪いと思うな。昔の仲間が集まれるんだから、来れないときは、それなりに遊ぶさ!どうだ、昔のXL-4をつくらないか?」
彼の返事は「俺だってやりたいんだ!」だった。私は、口説くのを諦めた。やりたくなったらその時に来ればいい、と思うことにした。しかし、また元の木阿彌になってしまった。3人では、形がつかないのである。
そんなある日だった。我々より2歳くらい下のお医者がギターの練習を始めたという噂が入ってきた。彼は、高校時代にバンドを組んでいてサイドギターを奏でていたらしい。ある日、お客が自由に楽器が弾け、楽しめる飲屋で、昔とったキネヅカよろしく舞台に上がりギターを弾きはじめて、あまりにも指が動かなくなっていたことに気がついたらしい。脳のため、老いた身体のために、再び練習を始めたと聞いた。我々より2歳下でやっていたなら同じ世代の曲であっても不思議はない。そこで、人を通して彼にアプローチをかけた。やはり、同じ世代と言ってもいい曲が彼の口から出た。すかさず彼を口説いた。彼は、頭を縦に振った。メンバーは、4人になった。ここに初めてNeo XL-4が誕生した。今、個々に初練習日に向かって自分のパーツを練習しているはずだ。平均年齢68.5歳のバンドである。脳のリハビリに、身体のリハビリに、老人たちの他人に迷惑のかけない楽しい遊びである。Neoには「新しい」とか「新時代」とか「新世紀」とかの意味合いがある。
私は、このブログで出来るだけ政治の話を書かないようにしてきた。また、書かないようにするつもりだが、先日テレビのニュースを観たとき感じたことがある。それは、安保改正法案の問題だった。やれ政権自民党お抱えの学者だの、野党お抱えの学者だのが居並ぶ席に奥田青年が座った。学者どもの話は、通りいっぺんで、一様与野党のお偉い先生方たちの話は聞いたよ、ほら国民は、政権を支持しているよ!だから即、決めるよ!と言っているようなものだったが、奥田青年の発言を聞いて、私は背筋を正した。理路整然と話す奥田青年の言葉は、ひとことも漏らさず聞いておきたいと思ったからだ。そうだ、爺たちは、Neoでも遊んでいりゃいい。もう若者の時代だ。今後の日本を託せる若者たちが出てきたのだ。もう首相の安倍やゴロツキ大臣ども、その他の爺どもは、引っ込み、潔く青年たちに任せればいい。それとも何かい?その立場に固執するほど儲かるのかい?奥田青年の発言通りあんたたち、このまま勝手なことをし続ければ自民党などこの世からなくなるゾ!新世紀、新時代、新しい、Neoは、若者に委ねたりと感じている。政権の方々よ、国民を舐めればえらいことになるゾ!爺たちだって怒っているんだゾ!(爺の一人より)