閉門即是深山 19
『新老人の思想』
(幻冬舎新書 五木寛之著)
その新書本の表紙には、タイトルより大きく「もう甘えるわけにはいかない。」と書いてある。また「自立と相互扶助。新老人階級の理想と現実」ともある。
背表紙には、タイトルと共に「老後の生き方の大転換」と書いてあった。
まさに、このブログがあるホームページで西村周三氏と各世代の作家の方々の対談で明らかにしていこうとしている内容である。
その五木さんの昨年12月に出された『新老人の思想』の裏表紙の帯には「すがらず、老いに抗わず、絶望から希望を見出す〈新老人〉が世界を変える──」と書かれている。この本のキャッチ・フレーズだろう。その下には、
●自分の面倒は務めて自分でみる
●「若い世代に頼る」から「同世代で支え合う」へ
●難病や障害を抱える人びとには、あたう限りの手助けをする
●理不尽な税金でも、歯をくいしばって払う
●所得の多い人は年金や介護も受けない
●養生は大人のたしなみ。病院へはなるべく行かない
●新老人五つのタイプとは──A.肩書き志向型 B.モノ志向型 C.若年志向型 D.先端技術志向型 E.放浪志向型
と、書いてあった。そして、裏表紙に本の内容が書かれていた。
《日本は今、とんでもない超・老人大国に突入しようとしている。長寿がお荷物にすらなるこの世の中で、かつての老人像とまったくちがう〈新老人〉の思想が必要なのだ。それは未来に不安と絶望を抱きながらも、体力、気力、能力は衰えず、アナーキーな思想を持った新しいタイプの老人たちである。彼らに牽引され、日本人は老後の生き方の大転換を迫られている──。「若年層に頼らない」「相互扶助は同世代で」「単独死を悲劇としない」等、老人階級の自立と独立を説いた衝撃の思想。》
これは、五木寛之氏が他の書物でも、講演でも良く書かれ、語られている今問題を抱えている日本人の“考えるヒント”なのだ。
表紙に書かれている言葉までならば、このブログに書いても幻冬舎も怒らないだろう。書物には、著作権がある。表紙にもあるが、五木さんの本の宣伝にもなるし、そもそも本の表紙は、その中味の宣伝なのだから、ここまでは、許してほしい。この『新老人への思想』の著者“あとがき”によれば、「日刊ゲンダイ」に書かれた連載から選んだ提言の一部らしいから、五木寛之氏のファンの読者は、読んでいらっしゃるかも知れない。
この本の中で、五木さんは、世界に先駆けて「日本が超老人大国」になってしまったこと、そして「どうすれば日本が今後世界の各国でおこりうるこの問題を日本人が解決し、回答が出せるか」ということ、五木さんは、その回答を出そうとされている。是非に、読者の皆さまにも読んで頂きたい。
なぜなら、われわれも何とかその回答を出したいからだ。
それでないと今後の日本の「介護」や「年金」等の高齢者の問題が解決されない。それも始まっていて、時間がないのだ。
今、慄くのは、「団塊の世代」が高齢者になる時だ。私も団塊の世代といって良いかもしれないが、ちょうど差しかかりで「団塊世代といわれるひとたち」の1歳ほど前である。さて、この問題が、どのくらい続くのかといえば“20年くらいのモノ”だろう。なんとかそれを乗り切れれば、少しずつ問題は、解決されていくはずだ。
ただし、五木さんは、その後も平均年齢は上がり、120歳、150歳となるのではないか?と本では書かれている。そうすれば、数は減っても、量は減らないから、高齢者問題は続く。
私は、そうは思わない。子供のころ、金魚鉢に何匹かの金魚を入れたが、みな死んでしまったことがあった。金魚鉢と金魚の数が釣り合わなくて、水の中の酸素が足りなかったようだ。子供だったから、その点が判らなかった。大きなかめに雷魚を飼ったときもそうだった。それと同じように考えると、飛翔しすぎだと叱られるかも知れないが、宇宙の摂理を考えたとき、逆に人間が減り、平均寿命も“50歳定年の時代”「人生50年」に戻るような気がしてならない。
今年の正月の新聞の死亡記事欄を見ても。59歳とか60代が並んでいた。自然に任せば、いつかはバランスがとれるという私の考えは、楽観的過ぎるのだろうか? いや、あまりお医者様たちが、高齢者を救おうとしない方が、全ての人間にとって幸せなのではあるまいか、と私=高齢者がほざいているのだ。
さて、この問題を京都大学大学院名誉教授で、現在国立社会保障・人口問題研究所所長の西村周三先生と各世代の作家の方々との対談でヒントを探ってみている。各世代によって考えが多少なりと違う。もちろんその歳の代表ではない。ひとそれぞれ意見が違うからだが、1回目に山田太一さんにご出馬頂いた。山田さんは、1934年生まれ、御年80歳。70歳と80代の代表でタイトルに『ぼーっとしてたっていいじゃない』をつけた。第2回目は山本一力さん。1948年生まれ、私の2歳下の60歳代表。題名は『引き算人生のすすめ』である。
46歳、40歳代の代表はSF小説の旗手瀬名秀明さんだった。題名は『希望を語るビューティフル・エイジング』である。これからも他世代が続く。30代作家と20代作家との対談だ。是非に読んで“考えるヒント”にして頂きたい。